世の中上手い話なんてありませんが、この確定拠出年金という制度は使わないとむしろもったいないとも言える制度です。
ただ、やや難解でわかりにくいことと、金融機関がほとんど勧めてこないということもあって知名度が低く、利用者もまだまだ少ないのが現状です。
しかし上手く活用すれメリットばかりなので是非本ページをよく読んで理解を深めてください。
確定拠出年金のポイント
確定拠出年金の大きなポイントは以下の4つです。
- 受け取りは原則60歳以降
- 掛金は全額所得控除
- 個人型・企業型がある
- 投資商品を自分で選ぶ
- 企業年金無し:5,000円~23,000円
- 企業年金あり:5,000円~27,500円
- 企業型確定拠出年金あり:5,000円~55,000円
やや複雑な制度ですがこの4つを理解すれば確定拠出年金という制度がどれだけ良い制度なのか理解できると思います。
将来のための投資として運用するので受け取りは原則60歳以降
確定拠出年金に拠出した掛金は原則60歳までは受け取ることはできません。
これは国が確定拠出年金を老後資金への備えの為の投資と定めているからです。年金と付いている通り年金制度の一種なのです。
絶対に受け取ることが出来ないわけではありませんが、満期までに受け取るには非常に厳しい条件が課せられます(本人死亡時等)。
長期間に渡って掛金が拘束されるので損をするのではないか?と思うかもしれませんが、確定拠出年金には強力な税制優遇措置が用意されているので、長期間に渡って掛金が拘束されても損失が出づらく利益が出やすい仕組みになっています。
掛金は全額所得控除される(上限あり)
確定拠出年金の掛金は全額所得控除されます。
例えば、
年収600万円のサラリーマンの方が月々23,000円掛金を設定して年間276,000円掛金を拠出したとします。
月々掛金23,000円×12ヶ月=年間掛金276,000円
この年間掛金276,000円が全額所得控除されます。
その効果は年収700万円で課税所得400万円の場合、
所得税:
年間掛金276,000円×所得税率20%=免除税金55,200円
住民税:
年間掛金276,000円×所得税率10%=免除税金27,600円
この所得控除によって免除された税金は翌年の所得税、住民税から減額されます。
このケースでは、年間276,000円拠出すると所得税55,200円+住民税27,600円=82,800円が控除されます。
年収によって所得税、住民税の税率は変わりますが、どの方にとっても国が運営していなければ詐欺だと思うレベルの強力な税制優遇措置です。
しかも、掛金は丸々確定拠出年金口座内に残ってるので、所得控除分だけ利益を受けていると考えることもできます。
※所得税の計算(参考)
日本の所得税は累進課税(所得の多い人の方が高い掛け率で税金が課せられる)という制度に基づき、以下の掛け率で計算されています。
課税所得額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
千円~194.9万円 | 5% | 0円 |
195万円~329.9万円 | 10% | 97,500円 |
330万円~649.9万円 | 20% | 427,500円 |
695万円~899.9万円 | 23% | 636,000円 |
900万円~1,799.9万円 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円~3,999.9万円 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
所得とは収入から保険料や必要経費を引いたもの。一般的な会社員の場合必要経費はありませんので代わりに給与所得控除というものが自動的に引かれて計算されます。
給与所得控除額は以下の表のとおりです。一般的な会社員の場合太字の3つのいずれかの控除額が適用されることが多いと思います。
年間収入 | 給与所得控除額 |
---|---|
1,625,000円まで | 650,000円 |
1,625,001円~1,800,000円 | 年収×40% |
1,800,001円~3,600,000円 | 年収×30%-180,000円 |
3,600,001円~6,600,000円 | 年収×20%-540,000円 |
6,600,001円~10,000,000円 | 年収×10%-1,200,000円 |
10,000,001円~12,000,000円 | 年収×5%-1,700,000円 |
12,000,001円以上 | 2,300,000円 |
会社員の所得税は上記2つの表を基に計算されます。例えば年収600万円のAさんの場合、年収600万円から給与所得控除(年収×20%+54万円)及び社会保険料や生命保険料、家族がいる場合は扶養控除等が引かれた分が給与所得となります。
給与所得=年収600万円-給与所得控除-保険料等その他の控除
例として保険料及びその他の控除が50万として給与所得を計算すると、年収600万円のAさんの給与所得は376万円となります。
この場合税率は「330万円~649.9万円」の枠に入るので20%(控除額427,500円)となります。実際に計算すると、
所得376万円×税率20%-427,500円=所得税324,500円
となります。
会社員の場合これが毎月給料に応じて積算され、給料から天引きされているのです。
生命保険や住宅ローン、そして今回解説する確定拠出年金で節税が出来るのはこの給与所得を減らすことが出来るからです。
確定拠出年金は上限はありますが、掛け金を全額所得控除とすることが出来ます。上記税率表を見てわかる通り、例えば20%ラインの人が所得控除によって10%ラインまで落とすことが出来れば驚くほどの節税効果が得られます。
但し、無制限に掛金を拠出できる訳ではありません。拠出額は個人の条件毎に下限と上限が設定されています。
会社員:
自営業、フリーター、兼業主婦:
5,000円~68,000円
所得控除のことを知ると掛金を多くしたくなりますが、収入と相談をして無理のない範囲で掛金を設定することが大切です。
自営業者やフリーター、兼業主婦の場合公的年金(国民年金)に加入していることが条件です。年金を払っていない人や扶養に入っている専業主婦等は対象外です。現状では公務員も対象外となっています。
※2017年以降専業主婦や公務員も加入できる制度に変わる予定です。
個人型と企業型がある
確定拠出年金には個人が自分で手続きを行い加入する個人型と、企業が企業年金の代わりに確定拠出年金に企業が手続きを行い加入する企業型の2種類があります。
就業先が企業型に加入している場合には、個人型への加入はできないので就業先の企業型を利用して確定拠出年金に加入することになります。
それ以外の企業型確定拠出年金を取り入れていない会社に勤める会社員や自営業者達は個人型に入ることになります。
金融機関が用意した商品の中から投資先を選択する
個人型・企業型どちらの確定拠出年金でも契約した金融機関が用意した商品の中から投資商品を選択します。
自分で将来のための年金を運用するというのがこの制度が新しいと言われるポイントです。
但し、金融機関によって用意している商品は全く違います。
投資する商品によって投資の成績は大きく左右されるので、契約する金融機関が用意している商品のラインナップは、とても重要です。
数多くの銀行、証券会社が確定拠出年金の募集を行っていますが、契約する前に必ず商品のラインナップを確認しましょう。
また、個人型は自分で金融機関を自由に選ぶことが出来ますが、企業型は勤める会社が提携している金融機関が用意するラインナップから選ぶことになります。
ちなみに個人型で確定拠出年金を始めるならSBI証券がラインナップが多くてお勧めです。
関連記事:確定拠出年金(個人型)で投資信託に投資するならSBI証券が最適
確定拠出年金のココがスゴイ
確定拠出年金は掛金が全額所得控除されるので老後の資産形成の進めながら節税が可能です。
また、運用期間中の運用益は全て非課税になり再投資もできます。更に運用期間が終わって受け取る時にも税制優遇措置が適用されます。
確定拠出年金の受け取り時の税制優遇措置とは?(参考)
確定拠出年金の受け取り時の税制優遇措置は、1度に全額受け取る「一時金」と分割して「年金」として受け取る場合の2つのパターンがあります。
分かりやすく言えば一括で受け取る一時金は「退職金」のようなもので、分割して受け取る場合は「年金」のようなものです。確定拠出年金の受け取りはこの2つから選ぶことができます。
退職までまだまだ年数がある人で知っている人は少ないと思いますが、退職金には「退職所得控除」、年金には「公的年金等控除」という税制優遇処置が存在します。
確定拠出年金で受け取る年金、または一時金は所得なので課税対象となりますが、それぞれ税金の優遇処置が受けられることになります。
退職所得控除の詳細:No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)|国税庁
公的年金等控除の詳細:No.1600 公的年金等の課税関係
つまり掛け金ばかりでなく、受け取りにも税制優遇処置が受けられるわけです。
確定拠出年金の注意点
強力な税制優遇措置が適用される確定拠出年金ですが、投資対象によっては損をしてしまうことがあります。
例えば、株式やリートといったリスクの高い投資信託に集中投資していた場合に、60歳になる頃に市場が暴落する事態が起こると大きな損失を被ることがあります。
そのため、リターンを求めてリスクを取り過ぎ無いように注意しつつ安定成長が見込める投資信託へリスクの範囲でバランスを取って投資するのが良いでしょう。
また、確定拠出年金の商品ラインナップには必ず元本が保証される商品が用意されています。
無理にリスクを取らずに元本保証商品に投資して税制優遇措置を利用しながら手堅く資産形成をするのも良い方法です。
所得が控除されることで問題が生じる場合も
一般的に所得控除がされると節税効果が得られるのでお得という見方が強いですが、所得控除がされることで問題が生じる場合があります。
例えば会社員が加入する厚生年金は所得に応じて掛け金が変わり、また受給額も変わってきます。
厚生年金の掛け金、受給額の計算は非常に複雑なのでここでは省略しますが、所得を減らすことによって将来の年金受給額が下がることも懸念されます。
また住宅ローン控除も所得に応じて減税がされるため、所得が控除されることによって住宅ローン控除が減額になり、結果的にあまり得しない場合もあります。
特に会社員の場合、他の税制処置との兼ね合いを考えて検討しましょう。
まとめ
国は将来の少子高齢化に伴う社会構造の変化によって年金、社会保障の減額は避けられないと考えています。
そこで、国民に自助努力をするように促しています。
確定拠出年金は国からの自助努力をする為の支援制度です。
この制度は強力な税制優遇措置を感受でき、しかも60歳まで引き出すことができないので、確定拠出年金の積み立てを続けていくことで自然と老後資金の形成ができます。
日本で老後資金を貯めていくのに、これ以上有利な制度はありません。
是非、貴方の老後資金の形成の役立てて下さい。