投資信託の中にはまだまだ少ないですが銀行や証券会社等で販売されておらず、投資信託を運用する会社が直接販売する直販型と呼ばれるものがあります。
参考記事:直販型の投資信託は買いなのか。
直販型の投資信託はその先駆けとなったさわかみ投信や、社長自ら投資信託に関する著書も多数出版しているセゾン投信等が有名ですが、今回解説する「ありがとう投信」も直販型ファンドとしては2番目に歴史が長く知名度も高いです。
本ページでは独立型投信会社、ありがとう投信が運営する「ありがとうファンド」について解説します。
ありがとうファンドの概要
ファンドオブファンズ方式(投資対象が投資信託というもの)で運用されています。
組み入れファンドは主にアクティブ運用で信託報酬が高め。投資対象は国内外の株式及び債券。
複数のファンドに分散投資をして長期的な運用を目指しています。
資産配分は下記の通り。国内株、先進国株が中心。
モーングスターレーティング:★★★★
リスクメジャー:平均的
信託報酬:1.70%(実質)
国内、海外株式がほとんど
ありがとうファンドは全体の約7割を国内株、海外株のファンドへ投資しています。
組み入れファンドは「TMA長期投資ファンド」や「キャピタル・グループ・USグロース&ハイインカム・ファンド」等適格機関投資家限定のアクティブ型ファンドが中心です。
適格機関投資家とは金融庁が定める金融商品取引業者、銀行、保険会社等のことを指します。
実績は悪くないが良い投資信託とも言えない
結論から言うと「ありがとうファンド」は悪いとは言えないが良いとも言えないという微妙な感想です。
まず悪い投資ではないという理由から説明するとやはり安定性と実績にあります。
ありがとうファンドは基準価額、純資産ともに開設から安定的に伸ばしていて、過去10年間の平均年間リターンは2.01%となっています。
※下の画像はありがとうファンドのグラフです。
全体的に(リーマンショック時を除けば)大きな下落はほとんどなく、開設から10年余りの間緩やかな右肩上がりとなっています。
アクティブ型と言えど国内外の株式に分散投資をしているため、比較的リスクは小さく安定的に資産を増やすことが期待できます。
信託報酬の高さがネック
ここからはデメリットです。
ありがとうファンドはファンドオブファンズという投資信託に投資するタイプの投信です。
そしてファンドオブファンズはその性質上、信託報酬を二重に支払ってしまうことになってしまうため手数料が高額になりやすいです。
参考記事:投資信託を対象にファンドを組むファンドオブファンズは買いなのか
本ファンドも実質の信託報酬は1.70%とかなり高額となっています。
ありがとうファンドが投資する投資信託のほとんどが適正機関投資家限定のものが多く、一般投資家が投資出来ないので無駄に手数料を支払うことになるというわけではありませんがそれにしても高額すぎます。
それに必ずしも「TMA長期投資ファンド」や「キャピタル・グループ・USグロース&ハイインカム・ファンド」等の機関投資家限定ファンドが優れているとも言えず、あえてこれらに投資する必要があるかどうかは疑問です。
ただ、ありがとうファンドの場合、開設から十数年安定成長を遂げているため高い信託報酬を支払ってでも投資する価値はないとは言い切れず、間違った選択であるとも思いません。
長期投資にテーマ型ファンドは必要か
もう一点、ありがとうファンドに対して疑問が浮かぶ部分があります。
それは「社会貢献ファンド」というテーマ型の投資信託が組み込まれていることです。
テーマ型ファンドはそのテーマが旬の時は好調ですが旬を過ぎると価格は下がる一方となってしまいます。
社会貢献というテーマは非常に曖昧でよくわからないテーマですが、長期安定投資なのにテーマ型ファンドに投資するのはちょっとよく分からないですね。
ちなみに一般投資家でも購入できる「社会貢献ファンド」の中身を見てみましたが、組み入れ銘柄はブロンコビリー(ステーキ・ハンバーグ店)、アークランドサービス(かつや等を展開)、三菱鉛筆、オムロン、トヨタ、ヤフー等どういうテーマで選出されているのかよくわからないものでした。

テーマ型ファンドは「IT」や「環境」等、産業に合わせて組まれたファンドもあるが、「社会貢献」や「地域貢献」、「日本応援」のような抽象的なテーマのものもある。
これらはテーマに沿ったファンドというよりは単に購入者の購買意欲を誘うためだけに作られたファンドである可能性が高いので注意しよう!
まとめ
私の場合、投資信託は原則インデックス型を購入すると決めているのでアクティブ型ファンドに投資する「ありがとうファンド」を購入しようとは思いませんが、アクティブ型も選択肢に入れている人はまあ悪くない投資だと思います。結果からみれば。
ただ、やはり信託報酬が高いことと、テーマ型ファンドが組み込まれていることから長期安定投資として適しているかどうかは疑問が残ります。
ファンドオブファンズではなく、直接投資するファンドの組成をする予定は、ありますか?