これまで投資に興味がなかった人が銀行で投資信託を勧められて投資を検討するようになる。
ということはよくありますよね。
かくいう私も投資信託を知るきっかけになったのは23歳くらいの頃に地方銀行で勧められたからだったりします。リーマンショックが起こる前の話です。
投資信託は20年ほど前までは証券会社でしか販売されていませんでしたが、1998年より銀行等の金融機関から販売が可能になり、現在国内の投資信託の約半分が銀行から購入されているようです。
※投資信託は運用している会社と販売している会社が異なります。投資信託の仕組みについて全く分からないという人は、図でわかる!投資信託の仕組みをわかりやすく解説をご一読ください。
銀行は証券会社と違い投資に興味のない人も利用するため、銀行で投資信託を購入する人の多くは投資のことをよくわからず投信を購入してしまったりします。
しかしこれは実は非常に危険です。
何故なら投資信託はあくまで投資であり、元本保証はされず最悪の場合元本の半分以上を失ってしまうこともあります。現に一般販売されている投資信託の大半が年間利回りで赤字が出ています。
投資信託はローリスクローリターンというイメージが強いですが国内で販売されている投資信託の中には非常にリスクの高いものもあり、そのような商品(投信)を銀行で勧められることも少なくありません。
本ページでは、
「銀行で投資信託を勧められて購入すべきか迷っている」
または、
「もうすでに購入したけどちゃんと利益が出るか心配だ」
という人のために最低限抑えておくべき投資信託の4つのポイントを解説します。
その4つとは、
- 長期的に運用されていること(運用期間が短くないか)
- 純資産総額が増え続けていること
- 基準価額は上昇傾向であること
- 分配金再投資型であること
上記4つを満たしていれば購入を検討しても良いと考えます。
逆にどれか一つでも満たしていなければ購入は見送った方が良いでしょう。私なら絶対購入しません。
ただ、銀行で販売されている投資信託の多くはよくても1つ、場合によっては一つも満たしていないと思います。そういった投信はもし購入していたとしてもすぐに売却することをお勧めします。
初心者は長期的に運用されている投信を選ぼう
一番目のポイントはその投資信託が長期的に運用されているかどうかです。
銀行ではファンド(投信)の資産を集めないといけないので運用期間が短いものや新設の投資信託が販売されることが多いです。場合によっては銀行の営業マンにノルマが課せられたりすることもあるようです。
しかし特に初心者は運用期間が短いものを購入してはいけません。
運用期間が短い投資信託は先行きが分からない
投資信託を購入する人の多くはおそらく長期的に資産を増やしたいと考えて投資するはずです。
そういう人にとって投資信託の最悪の事態は投信の運用がすぐに終わってしまうことです。
5年、10年運用が続いているものであれば確実とは言えませんが今後5年、10年運用が続く可能性は高いでしょう。
しかし開始から1年、2年程度だと先行きが一切分かりません。業績不振でファンド(投信)が終了してしまうこともあります。ファンドが終了してしまうとその時点で所持していた投資信託は現金化されます(これを償還されると言います)。
投信によってはファンドの終了日(償還日)があらかじめ決まっているものもありますが運用不振が続くと償還日を待たずしてファンドが終了してしまうケースもあります(これを繰り上げ償還と呼びます)。
繰り上げ償還される時は業績が悪い時なのでほぼ必ずと言っていいほど損失が出てしまいます。
運用期間が5年以上あるものであればこれまでの運用状況からある程度リスク、標準偏差(利回りのバラ付き)が分かるのでどのような投資信託なのかがある程度分かります。
10年以上であればその精度は更に高まりますし、リーマンショックがあっても継続して運用していることが分かるので安心して投資が出来ます。
投資信託を選ぶ際は短くてもリーマンショックがあった2008年以前から運用されているものを選びましょう。
純資産総額が増えていることは最低条件
今回上げる4つのポイントで最も重要であり、投資信託を購入する上で欠かせない要素とも言えるのがこの純資産総額です。
そもそも投資信託というのはこの純資産総額を資産運用によって増やすことが目的なわけですからこれが減っているというのは投資する意味がない投資ということになります。
純資産総額が減っている投資信託を購入するのは赤字続きで資産が減少している会社の株に投資するようなもの。買ってはいけないどころか所有していたら真っ先に売るべき投信とも言えます。
もちろん金融市場の影響で下がっている分には仕方がない面もあります。
例えばリーマンショックがあった2008年~2009年頃は世界全体が株安に見舞われたわけですからほとんどの投資信託の純資産も一時的に落としてしまいました。
しかしそれはあくまで一時的なもの、金融市場が再び上昇すれば合わせて純資産も上昇します。
逆にそれ以外の理由で資金が流出している投信は非常に問題です。
例えば下画像の投資信託は日本で最も売れた投信の運用状況を表すグラフ(純資産は薄い青の部分)ですが、2008年頃をピークに純資産が減少し続けています。
リーマンショック以降金融市場は再び上昇し、現在はリーマンショック以前の水準までに回復したはずですが上記投信の資産は減少し続けています。
これが何を意味するかというと、金融市場の影響を受けて資産が減っているわけではなく、投信の運用そのものによって資産が減ってしまっているんですよね。
このような投資信託を購入するのは赤字で資産を垂れ流し続けている会社の株を購入するようなものです。
必ず下画像のような純資産が上昇している安定的な投信を選ぶようにしましょう。
また、純資産総額に関しては増加が良いとは限らない。投資信託の純資産総額はここに気をつけろで詳しく解説しているので興味のある方はご一読ください。
基準価額が下がっている投資信託は要注意
投資信託の基準価額は株取引の株価のようなものでその投信そのものの売買価格を表す数値です。
しかし基準価額は株価とは全く異なる性質を持っており、株価と同じような感覚で判断してはいけません。
その最大の理由は基準価額は下がって買いが殺到しても上昇しないからです。
「基準価額が安い」はお買い得ではない
銀行ではたまに「基準価額が安い今が買い時です」というような営業の仕方をすることがあるそうです。
※参考資料:知らない人だけが損をする 投資信託の罠|週刊ダイヤモンド金融商品特別取材班
しかしこれは全くの見当違いです。
基準価額はその性質上安いからといって購入が殺到しても上昇しません。
ではどうすれば上がるかというと、原則ファンドの運用の成果(運用利回りや保有している金融資産そのものの価値の上昇)によって上昇します。具体的には購入口数(購入者×口数)の増加以外でファンドの資産が増えれば基準価額は上昇します。
ファンドの運用の成果によって基準価額が上昇するわけですから、逆に基準価額が下がっているということは運用によって資産を減らしているということになります。
これが良い状態と言えるでしょうか。
株取引の場合、株価が下落すると反発(下落している株が上昇すること)を狙って購入する人が殺到したりします。
株の場合需要と供給のバランスによって価格が決まるので購入が殺到すると株価は上昇していきます。
なので「相場より安い株価は買い時である」という考え方は間違っていないと言えます。
しかし投資信託の基準価額は何度も言っているように価格が下がって「買い」が殺到しても上昇したりはしません。
そのため投信の基準価額は開始時からほとんど下がりっぱなしということも少なくないんです。
※下画像は基準価額が下がり続けている投信のグラフ。橙色のグラフが基準価額です。
そのような投資信託を「安いから買いだ」と思って購入した場合どうなるでしょうか。
そのまま下がり続けて大損する可能性がありますよね。
毎月分配金を受け取ると損をする
銀行では毎月分配金が受け取れる「毎月分配型」の投資信託が勧められることが多いです。
その理由としてはやはり売りやすくて勧めやすいからです。
しかしこの毎月分配型の投資信託は「買ってはいけない投資信託」の代名詞的存在です。
その理由は、高利回りの毎月分配金支払いの投資信託を買ってはいけない理由に詳しくまとめていますが一言でいうと、
「上手い話には裏がある」
からです。
毎月分配型は資産を減らすだけ
下のグラフをご覧ください。橙色が基準価額、青色は分配金を再投資した場合の基準価額のグラフです。
上記グラフの投資信託は毎月250円の分配金を支払っている毎月分配型の投資信託の運用状況です。
毎月1口当たり(正確には1万口ですがここでは簡略して1口と表記します)250円なので100口投資すれば25,000円ずつ毎月分配金を得ることが出来ます。
その代わりに上記グラフをご覧の通り基準価額が開始時の4分の1ほどに下落しています。
例えばこの投資信託を開始時に銀行で100万円で買った人がいたとします。
するとどうでしょう。
毎月分配金25,000円ずつ受け取れるので「投資して良かった」と思いたいところですが現段階で最初に投資した資産は4分の1、つまり元本が25万円まで減少しています。
後の75万円はどこに行ったのでしょうか。
実は毎月支払われている分配金として少しずつ払い戻されていただけなんです。上記グラフは2014年4月から2015年5月までのグラフとなっていますから支払われた分配金はトータルで625,000円です。
この分を足しても現状では100万円投資した分が875,000円(現在の元本と分配金として受け取ったものを足したもの)となっており、125,000円の赤字となってしまっています。
分配金の中には元本払戻金と呼ばれるものがあり、毎月分配型の投資信託の多くはこの元本払戻金が分配金の一部に充てられています。これは儲けた分を利益として還元しているわけではなく元本を切り崩して支払われているものです。
参考記事:百害あって一利なし。元本払戻金が支払われる投資信託を買ってはいけない
毎月分配金の出るものは年間利回り10%とか20%を軽く超える分配金が支払われます。
しかし投資信託の運用利回りは5%で上々と言われる世界です。残りの5%~15%の分配金は元本を切り崩して支払われている場合がほとんどです。
ローリスク投資で10%、20%の利回りが得られるわけがないんですよね。
上手い話には必ず裏があります。
毎月分配金が支払われる投資信託には十分注意しましょう。
まとめ
銀行で投資信託を購入する人の大半の人が投資に詳しくない人です。
そしてそのほとんどの人が投資信託の仕組みはおろか、自分が何に対して投資しているのか、分配金がどこから支払われているのかさえも知りません。
そして銀行にとってそういった人達はこの上ない最高のお客様です。
投資信託を含め、多くの金融商品は購入する人が儲けるためにあるのではなく企画、販売、運用している会社が儲けるためにあるわけですから。
金融会社の良いカモにならないように自分でしっかり調べるようにしましょう。