毎月分配型の投資信託は非常に人気があります。投資信託売れ筋ランキングの大半がこの毎月分配金が支給されるタイプの投資信託です。
分配金が毎月支給されるのでお得感があると思う人が多いようです。
しかし多くの専門家は「毎月分配型は買ってはいけない投資信託である」と口を揃えて言います。
金融業界では毎月分配型の投資効率が非常に悪いということは周知の事実で2014年には金融庁から指摘され以降、新たに設定される本数は激減しています。
しかしそれでも未だに毎月分配型投信は人気があり、購入者がその仕組みを理解していないように思います。
本ページでは毎月分配型が何故損失が出やすいのか、その仕組みを解説します。
毎月分配型はデメリットしかない
毎月分配型の投資信託は相場の上昇に乗って短期的にリターンを得られることはあっても、長期的に継続してリターンを得ることは不可能です。
こう断言できるのは、毎月分配型の投資信託の根本に大きな欠陥があるからです。
その根本の原因は毎月分配型の投資信託から支払われる分配金です。
一般的に「分配金が沢山出るのは良い投資信託」だと考えられてきますが、実はこれは大きな間違いです。
分配金は課税される
現在の日本の税法では分配金の利益に対して20%の税金が引かれます。
仮に毎月50円の分配金を出す投資信託があったとします。
毎月50円ですから年間では(50円×12ヶ月=600円)600円の分配金を受け取ることになります。
しかし、この600円をそのまま受け取れる訳ではなく、20%の課税がされることとなります。
年間の分配金600円-税金120円(20%)=480円
この480円を受け取れる計算となります。
ここまで読んで、大した問題ではないなと思う方もいるかもしれませんが、本当の問題はここからです。
分配金の出ない投資信託も毎月分配型の投資信託も、投資した資産から同じように利益を得ています。
しかし、設定から3年~5年も経つも、全く同じ投資対象に投資していたとしても、分配金の出ない投資信託と、毎月分配型の投資信託のリターンには確実に大きな差が生まれます。
その理由は大きく二つあり、一つは毎月分配金を得ると複利効果を得られないこと、もう一つは一度払った税金は返ってこないという理由です。
毎月分配型は複利効果が得られない
複利効果とは、投資した資産から得たリターンを再投資しその再投資した資産から得たリターンを、更に再投資し、、、
という繰り返しによってリターンを大きくする効果のことです。
投資はこの複利効果によって雪だるま式に資産を増やすことが理想的です。逆に複利は借金にも同じような効果があり、雪だるま式に増えます。
仮に10,000円を年率3%の資産に投資したとします。
この場合1年間のリターンは300円です。
毎月分配型の投資信託では分配金として、その年の内に全てリターン分は支払われるわけですから毎年3%、10年間で30%のリターンを得ることになります。
これを単利と言います。
しかし、分配金を出さない投資信託はこの300円の利益を再投資する仕組みになっているので複利効果が発生し以下のようになります。
年数 | 元利合計 | 実質金利 |
---|---|---|
1年目 | 10,300 | 3% |
2年目 | 10,609 | 6.09% |
3年目 | 10,927 | 9.2727% |
4年目 | 11,255 | 12.5509% |
5年目 | 11,593 | 15.9274% |
6年目 | 11,941 | 19.4052% |
7年目 | 12,299 | 22.9874% |
8年目 | 12,668 | 26.677% |
9年目 | 13,048 | 30.4773% |
10年目 | 13,439 | 34.3916% |
15年目 | 15,580 | 55.7967% |
20年目 | 18,061 | 80.6111% |
10年間で35%は単利の30%と大差は5%程度しかありませんが、これが15年だと10%、20年だと20%とどんどん差が開いていきます。
20年間で20%の差が付くということは300万円を投資した場合、60万円の差が付いているということです。
投資してから何もしない場合でも、これだけの差が出るわけです。
専門家が口を揃えて「毎月分配型の投資信託を避けるべきだ」と言う理由はこの複利効果が得られないという理由が大きいです。
複利効果の期待できない毎月分配型の投資信託は、資産を増やす手段としては避けた方が良いでしょう。

天才物理学者のアインシュタインの名言に「人類最大の発明は複利である」という言葉があります。それほどまでに複利の力は偉大なのです。複利を得られない毎月分配型に魅力はありません。
払った分配金は返ってこない
毎月分配型の投資信託の分配金で課税され、支払った税金は返ってきません。
分配金の出ない投資信託と、毎月分配型の投資信託で大きな差が生まれる二つ目の理由がこれです。
下の表は毎月分配型の投信と分配金再投資の投信を比較したものです。
月数 | 分配金 ()内は運用利回り | 税金 | 分配金再投資 ()内は運用利回り | 税金 |
---|---|---|---|---|
1月 | 100円(10%) | 20% | 0円(10%) | 0 |
2月 | 100円(-10%) (元本払戻金) | 0 | 0円(-10%) | 0 |
3月 | 100円(10%) | 20% | 0円(10%) | 0 |
4月 | 100円(-10%) (元本払戻金) | 0 | 0円(-10%) | 0 |
合計 | 課税対象200円 (運用利回りは0%) | 40円 | 利回りが0なので 売却しても課税されない | 0 |
どちらも運用の利回りは1月に+10%、2月に-10%、3月に+10%、4月に-10%、4カ月の運用益はプラマイゼロとしています。
つまりどちらのファンドも儲けてもいないし損もしていません。
しかし毎月分配金が支給されている投資信託は利益が出た月の分配金は課税対象となります。
利益が出ておらず、元本払戻金(特別分配金)として支払われた分配金(上の表で2月と4月の分)は課税されません。
しかし利益の出ている月に受け取った分配金はちゃっかり課税されるため、無駄に税金を支払ってしまうことになりかねません。
上記例では結果的にプラマイゼロの運用ならその年に解約してすべて売却してしまえば損益通算されて無駄に税金を支払うことを免れることはできます。
しかし支払った税金を翌年以降に取り戻すことは難しいケースが多いです。
分配金再投資型では5年間実質利益が出ていなければ売却時に課税されることはありません。
しかし毎月分配型は5年間で実質利益が出ていなくてもその間に分配金の利益によって支払った税金は返ってこないため、その分赤字となってしまうのです。
過去の赤字は3年前まで持ち越すことが出来ますが、過去の黒字と当年の赤字を足して相殺することはできません。
例えば下の表のように4年間10%の利益(分配金は年間20万)が続き、5年目で40%の赤字が出て5年間トータルではプラマイゼロ。
という運用があった場合、毎月分配型と分配金再投資型ではこのような差が出てきます。
月数 | 分配金 ()内は運用利回り | 税金(20%) | 分配金再投資 ()内は運用利回り | 税金(20%) |
---|---|---|---|---|
1年目 | 20万円(10%) | 4万円 | 0円(10%) | 0 |
2年目 | 20万円(10%) | 4万円 | 0円(10%) | 0 |
3年目 | 20万円(10%) | 4万円 | 0円(10%) | 0 |
4年目 | 20万円(10%) | 4万円 | 0円(10%) | 0 |
5年目 | 20万円(-40%) | 0 | 0円(-40%) | 0 |
5年トータル | 課税対象80万円 (運用利回りは0%) | 16万円 | 利回りが0なので 売却しても課税されない | 0 |
最終的にプラマイゼロとなっていますが、5年目でどれだけ赤字だったとしても、過去に支払った利益は返ってこないので税金の払い損が起きてしまいます。
もちろんこれはあくまで例なのでこのような極端な事態になることはありませんが、高頻度で分配金を得て先に税金を支払うと払い損をするリスクが確実に高まります。
これが毎月分配型のリターンが少なく、損失が出てしまう2つ目の理由です。
この2つの理由から同条件、同運用状況であっても毎月分配型投信は分配金なし(分配金再投資型)投信よりもリターンが小さくなる、つまり損失が出るリスクが高くなってしまうわけです。
儲けているように見えてしまう
投資信託は基準価額や純資産等を確認しながらトータルでどれだけ利益が出ているかを確認する必要がありますが、それらは日々市場の変化によって上昇下降するので気にしないようにしている方も多いです。
毎月支払われる分配金にだけ注目している方が大多数です。
そういう投資家達には、毎月分配金が支払われる毎月分配型の投資信託は儲けているように見えてしまうのです。
しかし、毎月分配型の投資信託は資産が減少していく構造です。そのため資金流入が滞り始めると緩やかに基準価額は下落を続けていき、分配金を含めても投資元本と合わせて見ると長期的に保有するほど損をしてしまうのです。
そもそも、日本の投資信託の分配金の制度に問題があります。
アメリカや欧州の投資信託は、資産を切り崩して分配金を支払うことは投資家の資産を減少させてしまうことになるので認めていません。
近年金融庁は、この毎月分配型の投資信託の悪質性を是正する為の政策を取り始めてはいますが、日々新しい毎月分配型の投資信託は発売されています。
資産を増やしたいのなら、複利効果も得られない、資産の元本が徐々に減っていく、毎月分配型の投資信託は絶対に購入してはいけません。
目の前の分配金に惑わされず、資産を増やせる投資信託に大切な資金を投資しましょう。

毎月分配型と分配金なしとでは、投資家に先に支払っているか、再投資しているかの違いでしかありません。これまで解説してきた通り毎月分配金を支払うことは再投資するよりもリターンが小さくなることは明白です。それでも毎月分配型投信が多いのは「儲けが出たように見えるため投資家に好まれる」という理由からです。
「儲けたように見える投信よりも本当に儲かる投信が良い」という人は毎月分配型は買わないようにしましょう。