投資信託を購入する際、毎月支払われている分配金に目が向いてしまいますが、分配金が出ているからといって儲けが出るとは限りません

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何故なら高利回りの毎月分配金支払いの投資信託を買ってはいけない理由にも書きましたが分配金はそのファンドの運用によって利益が出ている出ていないに関わらず支払われることが多いからです。

分配金は原則元本を上回って儲けが出た部分から支払われるようになっていますが、それだけでなく運用で儲けが出ていない時でも元本から切り崩して支払う元本払戻金(以前は特別分配金と呼ばれた)という形で支払われることがあります。

例えば1ヵ月間の運用でそのファンド全体の利回りが1%だったとした場合、運用利回りから分配金を出せる範囲はどう頑張っても1%までですよね(実際は運用費用が掛かるのでもっと少なくなる)。

しかし1%ほどしか利益が出てなくても分配金は5%や10%出ていたりして、儲けが出ていると錯覚してしまうケースが多々あります。




分配金が出ているのに利益が出ていない投資信託

基準価額1万円に対して毎月100円の分配金が出ていると10%の利益が出ているように感じますが、先述した通り元本から切り崩して分配金を支払っていることは少なくありません。

分配金のうち運用による利益がどれだけなのかは各ファンドの報告書を見ればわかります。

例えば下記ファンドは今月(2015年5月)のランキング上位にあった毎月分配型のファンドの分配金の内訳です。

分配金

分配金のうち当期収益から出ている部分の割合が全体的に少なく、当期収益以外から出されていることが分かります。

ファンドの利益以外とは一体どこから支払われているのでしょうか。

もちろんその大半が純資産、つまり元本から切り崩して支払っているわけです。

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純資産を削って分配金を支払っているということはその分基準価額が下がっているということです。

基準価額がということは売却時の評価額が下がってしまうということなので売却時に赤字になってしまいます。

確実に利益が出ているファンド(投資信託)であれば多少基準価額が下がっても分配金と合わせてプラスになりますが、利益が出ていないファンドは基準価額が大幅に下がり分配金を合わせてもトータルで赤字になってしまいます。

利益が出ているかどうかはトータルリターンで確認しよう

雪だるま2

投資信託は分配金だけ、基準価額だけを見てもそのファンドで利益が出ているかどうかわかりません。

そこで実質の利回りの指標となるのがトータルリターンです。

トータルリターンは簡単に説明すれば売却時の価格と分配金を足して購入時の価格を引いたものです。

トータルリターンの計算(参考)

評価金額累計売却金額累計分配金額累計買付金額

で求められます。

※評価額は基準価額×保有口数÷取引口数(通常1万)

※累計売却金額は償還日が決まっているファンド等で出る償還金等

※累計分配金は買付から売却まで支払われた分配金

※累計買付金額は投資額及び手数料です

例:評価額70万+累計売却金額0円+累計分配金40万ー累計買付金額100万円

=トータルリターン10万円(10%)

となります。

トータルリターンは各ネット証券会社やモーニングスター等の情報サイトで確認することが出来ます。

※SBI証券

トータルリターン

※モーニングスター

トータルリターンモーニングスター

どちらも上述した当月利益以外からたくさん分配金が支払われたファンドのものです。

設定からほぼ毎月分配金が支払われていますがトータルリターンを見ると設定来から84.56%と非常に優秀な数字となっていますが、ここ1年ではマイナスに転じています。

※1年、3年、5年、10年は1年間の平均利回りが表記されていますが「設定来」はトータルの利回りが表記されています。例えば運用開始から10年で設定来利回り80%であれば年間平均利回り8%となります。

これだけの情報ではここからV字回復するのか分かりませんが、少なくともこの数字を見ると「毎月分配金が出ているからこれから買っても利益が出るだろう」と思う人は少ないでしょう。

もう一例、毎月200円以上という高利回りの毎月分配型投資信託のトータルリターンを見てみましょう。

日本株ハイインカム

ここ3ヵ月は上向きですが3年前からはほぼマイナスで1年前前後に購入した人は大きな損失が出ている計算となります。

トータルリターンが良い投信は購入すべきか

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トータルリターンが実質の利回りであり、トータルリターンこそが優良な投資信託を見極める重要な要素であることを説明してきました。

しかし、トータルリターンはあくまで過去の運営状況であって今後の利回りを保証するものではありません

モーニングスターではトータルリターンの高い順にランキング形式で閲覧することも可能ですがトータルリターンが高いからといって購入するのはやはりリスクが高いです。

ハイリターンである投資は同時にハイリスクでもあるわけですからあくまでファンドを選ぶ一つの指標として参考程度に留めておくべきです。

例えば最近はオリンピックの影響でブラジルの金融商品に人気が高まっていますが明らかに一時的なものなのでここ数年トータルリターンが大きいからといって今後、特にオリンピック以降上向きが継続されるとはとても思えません。

投資は過去の運用成績をチェックすることは基本ですが過去の数字だけ見ても未来が分かるわけではないので注意が必要です。

マリア2

過去の実績はあくまで過去のもの。
今後成長が期待できるかどうかは過去の実績より中身、つまり何に投資しているか、どれだけのコストが発生してどれだけのリターンが期待できるかの方が重要です。