投資信託を選ぶ上で純資産総額は基準価額と並んで重要な指標です。
そのため各証券会社の投資信託のページでは基準価額と並んで目立つ位置に表記されていることが多いです。
基準価額についてはこちら:基準価額が下がっている投資信託を買ってはいけない理由
下の画像はSBI証券の投資信託ランキングトップ5です。
純資産総額(以下単に純資産と省略する場合もあります)はそのファンド(投資信託)のパワーそのものを示し、原則として純資産が多ければ優良、少なければで劣悪であると言えます。
ただそれはあくまでも同じ条件下であることが前提で、必ずしも純資産が多いファンドの方が良いとは限らず購入時の純資産総額だけを見て決めるのは非常に危険です。
一般的に純資産総額は30億円以上が安全ラインとされておりそれ以上であれば特に問題はなく、多い方が良いというわけではありません。
更に原則として純資産が増えているファンドの方が優良であると言えますが、これに関しても必ずそうだとは言えず、純資産が増えているファンドでも買ってはいけないファンドはたくさんあります。
本ページでは投資信託における純資産総額の性質と見方について解説します。
純資産総額はどうやって決まるか
まず始めに投資信託の純資産総額はどのように決まるかを解説したいと思いますが、それを理解するためにはまず投資信託の仕組みを理解する必要があります。
投資信託は英語のファンド(fund)とも呼ばれたりするわけですが、このfundという単語は直訳すると「基金」という意味になります。
つまり投資信託は投資家から資金を集めて一つの基金とし、その基金で運用会社(ファンドマネージャー)が様々な投資活動をして基金を増やしていこうというものになっています。
総資産総額はファンドにあるすべての資産
ファンドが所有している金融資産(株、債券、不動産等)、そこから発生する配当金や利息、賃貸料等と投資家が出資した資金等ファンドが持っているすべての資産の総額を総資産額と言います。
純資産総額はその総資産額から運用費、必要経費を引いたものです。
・純資産=総資産-運用費・必要経費
必要経費にはファンドに掛かる手数料や投資家に分配される分配金等も含まれます。
運用が上手くいくと純資産も増える
原則としてファンドが所有する株価が上がったり、配当を得たりとファンドの運用が上手くいくとその分ファンドの資産も上がります。
例えば下の画像は「ありがとうファンド」の推移ですが運用から12年近く、緩やかに資産を伸ばし続けています。
2008年頃に一度ガクッと純資産が下がっていますが、これはリーマンショックの影響であると予想出来ます。
「ありがとうファンド」は国内株式、海外株式をバランスよく取り入れていますがこの時期(リーマンショック直後)は世界同時株安だったため所有している金融資産の価値が下がり純資産が大きく下降しています。
純資産の増減の原因を考えよう
純資産総額は原則運用が上手くいけば資産が上がり、逆に運用が不調だと下がるようになっています。
しかしそれは必ずしもそうとは言えず純資産が増え続けていても運用が上手く言っているとは言えないファンドも実は結構多かったりします。それが純資産総額だけで判断してはいけない最大の理由です。
何故純資産が増えても必ずしもファンドの運用が順調であるとは言えないのかというと、純資産は運用が上手くいっていなくても増やすことが出来るからです。
投資家が増えると純資産は増える
先述した通り、純資産は投資家が投資した資金も含まれるので投資家が出資すればするほど純資産も増加します。
例えば下画像はとあるファンドの推移ですが、2015年6月前後に純資産(薄い水色の背景にあるグラフ)が急激に伸びています。
不自然なほど純資産が急増しているので調べてみると2015年4月~2015年7月の3ヶ月間で口数が3倍以上にも伸びていました。
口数が増えるということは出資者が増えた、または買い増ししたことを意味し、この時期に銀行や証券会社等で大規模な拡販が行われた可能性があります。
運用によって資産が増えたわけではなく、購入者が増えた(出資額が増えた)ことで資産が増えただけなのでこのファンドの運用が必ずしも上手くいっているとは限りません。
また、口数が増えると基準価額が下がる可能性があるので(※基準価額が下がっている投資信託を買ってはいけない理由を参照)むしろ純資産が急増しているファンドは注意した方が良いです。
分配金で資産が流出するということは・・・
口数が急に増えてたファンドで気を付けない点がもう一つあります。
それは毎月分配型のファンドの場合、分配金によって純資産が減ってしまうということです。
先述した通り、投資信託は原則純資産が増えていることを良しとし、逆に下がることは好ましくありません。そもそも投資信託の運用目的はこの純資産を増やすことです。
しかし毎月分配型のファンドは口数が増えるとその分毎月支払う分配金も膨れ上がるので運用の良し悪しに関わらず純資産が下がってしまうことがあります。
例えば上記ファンドは2015年7月の地点で受益権総口数が約2600億もあるので「2600億×一口あたりの分配金」を毎月投資家に支払わなければなりません。
その分がファンドの運用で出ていれば問題はありませんが・・・
そういったファンドは運用そのものが上手くいかず、資産の流出が増え過ぎるとファンドの存続そのものが危うくなるので分配金の徐々に減っていくことが多いです。
まとめ
純資産総額はそれなりに多くて(30億円以上)、原則増えているファンドが優良ファンドであると言えます。
しかしこれまで解説してきたとおり、銀行や証券会社の拡販によって投資家を募れば簡単に資産を増やすこと出来ます。
銀行や証券会社の窓口では純資産が多いこと、増えていることをアピールして勧めてきますが増えていることが必ずしも良いこととは限りません。
純資産総額を見る時はまず不自然な増え方をしていないかと確認し、急激に増えていたり減少していれば、「何故増えているのか(減っているのか)」の原因を探しましょう。