教育資金の準備金として有用な資産運用法として学資保険とジュニアNISAを利用した投資信託があります。

ジュニアNISAとは教育資産の準備金として投資をしやすいように年間最大80万円までの投資が非課税となる制度です。

参考記事:NISAとは全く違う?ジュニアNISAのメリット、デメリットを解説

保険会社からは学資保険、金融機関からはジュニアNISAを勧められ、どちらにすべきか迷っている人も多いのではないでしょうか。

本ページでは学資保険とジュニアNISAでの投資信託の運用とどちらが良いか比較しながら解説しようと思いますが、結論を言ってしまうと私なら学資保険は入らないかなという見解です。




学資保険の利回りはどれくらい?

表

まずは学資保険でどれくらいの利回りが得られるのか見てみましょう。

下記は大手保険会社が提供する返戻率が高く人気のある学資保険の一例です。子どもが0歳から15年間の払い込みを想定しています。

※返戻率とは支払った金額に対する給付金の割合です

保険会社累計払込料受取累計額返戻率
明治安田生命保険176万6,060円200万円112.6%
ソニー生命保険181万2,672円200万円110.33%
日本生命保険272万5,920円300万円110.05%

だいたい月々1万円前後の払い込みに対して15歳、18歳以上で払い込みの105%~110%程度の給付となるものが多いです。給付金は18歳から年間50万ずつという形や15歳、18歳、22歳で給付という形になっているものも多いです。

15年間で110%程度ということは年間利回りはだいたい0.66%ということになります。

学資保険の2つのメリット

学資保険には返戻金の他に、「契約者の死亡時の払込免除」「生命保険控除による税金対策」という2つのメリットがあります。

前者は契約者(通常は両親のどちらか)が死亡した時に払込が免除され、毎月の支払いをせずに返戻金の受取りが出来るというものです。現在学資保険、こども保険と呼ばれるものにはこの払込免除が適用されているものがほとんどです。

後者の税金対策とは学資保険を掛けることで生命保険控除が受けられ、所得税及び住民税を減らすことが出来るというものです。

ただこの税金対策ですが、生命保険で控除出来る金額は新制度で年間最大8万円までとなっています。そして学資保険は生命保険控除枠の中で考えられるため、例えば死亡保険や医療保険等ですでに年間8万円以上の保険料を支払っている場合、税金控除の対象にはなりません。

※生命保険料控除について
生命保険料控除については本ページでは詳しく解説しませんが理解を深めるために簡単に説明します。

生命保険料控除とは端的に言えば所得から保険料を引いて税金を安くできますよという制度です。

日本が採用する累進課税制度では所得が多い方が税金が高くなるようになっています。そして所得は収入から健康保険や厚生年金、必要経費(会社員は国の規定によって控除される、いわゆる基礎控除)、そして保険料を引いたものとなっています。

・収入-基礎控除-社会保険-生命保険保険料=所得

生命保険を掛けていると所得を落とすことができ、その分税金も安くなるというわけです。会社員の場合税金は源泉徴収がされているので毎年保険料控除の申告書を会社に提出しているはずです。

生命保険料控除は制度が変わりやや複雑となっていますが、生命保険料控除は上限が決まっていて年間払込料が最大8万円までしか控除されないことだけ覚えておいてください。

介護保険や個人年金は別枠として計算されますが、学資保険は一般生命保険という枠で、死亡保険や医療保険と同枠の扱いとなります。

すでに死亡保険、医療保険で年間8万円支払っていると控除されません。


現在他に保険に加入していない場合、学資保険での控除額は4万円となります(年間8万円超の払い込みを行った上限額)。

4万円の控除でどれくらい税金が安くなるかは年収によって変わり、おおよそ下記の通りとなります。税金は所得税、住民税それぞれ安くなります。

所得金額所得税の軽減額住民税の軽減額合計軽減額
196万~330万4,000円2,800円6,800円
331万~695万8,000円2,800円1万800円
696万~900万9,200円2,800円1万2,000円
901万~1,800万1万3,200円2,800円1万6,000円

だいたい年間1万円前後となる場合がほとんどではないでしょうか。

他に保険を掛けていなければこれだけ税金が安くなるのでそれほど悪い投資とは言えないかなと思います。

15年間でだいたい15万円。

上記返戻金に足して計算すると15年間で約120%のリターンを得ることが出来る計算となります。

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多くの場合稼ぎ頭のお父さんは死亡保険や医療保険等に加入している場合が多いので、学資保険によって所得控除の恩恵を受けられるのは稀かもしれません。

投資信託の利回り

次に投資信託の利回りについてですが、投資信託は種類によって期待できる利回りが大きく変わってきます。

なので何を対象にするか、何に投資するかで利回りは変わってくるわけですが、ここでは将来の教育資金として手堅く投資をするという考え方で、比較的低リスクでかつそれなりにリターンを見込める投資信託を選出することにします。

外国債券へ投資するインデックスファンドの利回り

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投資信託で安定的かつそれなりのリターンを見込めるファンドとしておすすめなのは先進国を中心とした海外の債券へ投資するインデックスファンドです。

債券への投資は株式に比べて安定的、尚且つ先進国へ投資すればリスクは更に低くなります。

選んだファンドは「インデックスF海外債券(H有)1年決算型『愛称 : DCインデックス海外債券(ヘッジあり)』 」というインデックスファンドです。

インデックスファンドが分からない方は初心者はインデックスファンドを購入するべきだと言われるのは何故かをご一読ください。

上記ファンド(以下DCインデックス海外債券)はアメリカ及びヨーロッパの国債(そのほとんどがアメリカ)へ投資するファンドです。

「ヘッジあり」とは為替相場の影響がないものです。ヘッジコストが掛かるため「ヘッジなし」よりも利回りが悪くなりますがその分リスクは抑えられます。

というわけでかなりリスクの低い投資ですがリターンもリスクのある投資信託としてはあまり良くありません。

気になるリターンですが、DCインデックス海外債券は設定が2001年10月で、丁度約15年余りでトータルリターンは約38%となっています。

トータルリターンは信託報酬(手数料)を引いた利回りですから、今から15年前に100万円投資しておけば138万円程になっている計算です。

15年間で38%程度なので、このファンドの年間利回りの平均は2.5%程とかなり小さいものです。投資信託の場合2.5%の利回りでも複利によって15年で38%に増えるわけです。

※複利とは得た利益を再投資し、元金を増えることで大きくなる利益のことです

投資信託は手堅い投資でも3%前後は狙えると言われる世界なので、このリターンはリスクのある投資信託として魅力的ではありません。

しかしそれでも学資保険の110%(税金控除を考慮しても120%)よりはずっと大きいリターンとなっています。

同様ファンドでもっと効率の良いものもある

このファンドと同等の投資を行い、コストが安く高いリターンが期待できるファンドが2015年頃に登場しました。そちらを購入すれば同程度のリスクで投資効率を上げることが出来ます。

「野村インデックスファンド・外国債券・為替ヘッジ型」「SMT グローバル債券インデックス・オープン(為替ヘッジあり)」です。

これらは上述した「DCインデックス海外債券」よりも信託報酬(手数料)が安いため、その分リターンが見込めます。

実際この2つのファンドの登場の影響だと思いますが、DCインデックス海外債券は2015年頃から解約者数が増加し、資金流出に見舞われています。

※今回DCインデックス海外債券を参考例にしたのは同ジャンルのファンドで最も長く運営されているからです

ジュニアNISAで所得税は非課税

ジュニアNISA

投資信託の購入、運用によって得た利益は通常課税対象となり、売却時に年間約20%の所得税が課せられますが、NISA及びジュニアNISA口座を利用すれば非課税とすることが出来ます。

冒頭で少し触れた通りジュニアNISAは教育資金積立のために始まった新たな制度で、現在年間80万円までの投資が非課税となります。年間ですから毎月6.6万円くらいまでですね。

詳しくはNISAとは全く違う?ジュニアNISAのメリット、デメリットを解説を読んでいただくとだいたいわかってくると思いますが、無条件で非課税となるので使わない手はありません。

教育資金ということでジュニアNISAを取り上げていますが、まだ利用していなければ通常のNISAを利用することを強くオススメします。こちらは年間最大120万円までの投資が非課税となります。

参考記事:NISAのメリットとデメリット、有効活用法を解説

メリットとデメリットをそれぞれ比較

学資保険と投資信託をリターンだけで比較すれば圧倒的に投資信託が有利ですがその分リスクがあったりもしますし、学資保険にはリターン以外のメリットもあります。

それぞれメリットとデメリット、特徴をまとめると下記の通りとなります。

 学資保険投資信託
リターン小さい
高いもので年間110%
小~中、種類による
低いもので2%程度
高いもので8%以上
リスク非常に小さい
途中解約以外で元本割れリスクはほとんどない
小~中、種類による
元本割れリスクが生じるが、
極めて小さいものもある
流動性低い。途中解約すると
元本割れを起こす場合もある。
原則いつでも買付、解約(売却)が可能
特有のメリット契約者死亡時に払込免除がある
所得控除がある
・リスクは極めて低い
種類が豊富
流動性があり自由度が高い
特有のデメリット流動性がないことが問題
・ペイオフがないので確実な保証があるわけではない
元本割れを起こす場合がある

学資保険は流動性がないことが問題

学資保険に限ったことではありませんが、積立型の保険はとにかく流動性がないことが最大のリスクとなります。

個人年金ほどではありませんが、学資保険は途中解約をすると元本割れを起こすリスクがあります。ある程度払込をしていれば元本割れまではいかなくてもリターンゼロ、つまり払った分が返ってくるだけとなることが多いですが。

元本割れを起こさなければリスクはないと考えるのが長い間低金利政策に翻弄されてきた私達日本人の考え方ですが、実際数年の間、金融機関(保険の場合保険会社ですが)にお金を預けてリターンがゼロというのは通常あり得ないことです。

超低金利と言われる現在でも銀行にお金を預ければリターンはあるわけですから。

流動性のない資産投資の割に払込が満了でも単利で年間0.66%というのはリスクの割に余りにもリターンが悪いです。

払込免除は本当にメリットと言えるか

学資保険には契約者が死亡すれば払込免除があり、単純に利回りだけで比較するのは早計かもしれません。

しかし死亡した時に免除される払込金額は10年間でも120万円程度(月1万円×10年間の払込で計算)であり、死亡した時の保障としては大した金額とは言えません。

死亡を想定するなら月1,000円程度で1千万円前後の保障がある死亡保険に入るべき
です。


マリア2

「投資、貯蓄と万が一の保険は別々に考えるべきである」というのが専門家の見解です。万が一の保障と貯蓄を合わせて商品化するのは消費者の心理を上手く付いた商品。お得であるとは言えません。

まとめ 投資信託のリスクを容認できるか

投資信託を買うべきか、学資保険に加入すべきかは投資信託のリスクをどこまで容認できるかがポイントとなります。

私の個人的な意見としては学資保険の流動性が悪い分、リスクはどちらも変わらないレベルであると感じます。

投資と聞くと多くの人は「損をする可能性が高い」と考えますが、今回紹介した先進国債券のインデックスファンドレベルであれば損失が出るのはむしろ稀です。

このような安定的な投資は銀行や保険会社等の金融機関も行っていることです。

※保険会社の資産の大半は有価証券です

保険会社の資産

投資信託の場合、積立投資でも家計が厳しい時は投資額を減らし、ゆとりのある時は多めに投資するといった資産運用が可能です。

どちらの方がリスクが高いかというのは人によって考え方が変わってくると思いますが、私は「リスクは同レベルなのでリターンの多い投資信託を購入した方が良い」と考えます。