REIT(不動産投資信託)は主に、
- 住居主体型
- 事務所主体型
- 商業施設主体型
- ホテル主体型
- 物流施設主体型
- ヘルスケア施設主体型
- 複合型
等の種類に分類されますがその中でもスタートしたのが2014年11月と最も新しく、2015年に最も注目されたのがヘルスケア施設主体型REIT(以下ヘルスケアREIT)です。
ヘルスケアREITが投資するヘルスケア施設は大きく「有料老人ホーム(以下老人ホーム)」と「サービス付高齢者住宅(以下サ高住)」の2種類に分類される高齢者向け施設です。
老人ホームとサ高住の解説
介護施設、高齢者向け施設は総じて老人ホームと呼ばれることが多いですが、実は細かく分類されており、その中で一般的に介護が必要で介護を目的する施設のことを「老人ホーム」と呼ばれます。
サービス付高齢者住宅は介護施設というよりはどちらかというと賃貸住宅に近いです。その名の通り食事や安否確認の見回り、デイサービスへの送迎等のサービスが付いた高齢者向けの住宅で、老人ホームと違い介護を必要としない高齢者もたくさん入居しています。
ヘルスケアREITには現在、
- 日本ヘルスケア投資法人(証券コード3308、以下NHR)
- ヘルスケア&メディカル投資法人(証券コード3455、以下HCM)
- ジャパン・シニアリビング投資法人(証券コード3460、以下JSL)
の3銘柄がありますが、これら3銘柄とも9割前後が老人ホーム、残り1割前後がサ高住という構成となっています。
まだ3銘柄とも設立されて日が浅いですが、ヘルスケアREITはアメリカでは1980年代に出現したと言われており、現在米REITの市場規模の12%を占めるほどに成長しているため国内でも注目されています。
本ページでは上記3銘柄の中身を見ながら投資するべきかどうかを解説します。
ヘルスケアREITの概要
先述した通りヘルスケアREITは老人ホームやサ高住等のヘルスケア施設(高齢者施設)に投資するREITです。
といってもREITは不動産投資信託ですから実際に高齢者施設を運用、管理するのではなく介護事業者と賃貸契約をして物件を提供する形態となっています。
画像は日本ヘルスケア投資法人より
私達一般投資家は画像右端の投資法人が発行する投資証券を購入して投資を行います。
※REIT(リート)の基本的な仕組みについてはJ-REIT(不動産投資信託)の基本と選び方を参照。
現在3銘柄あるヘルスケア型の投資法人はいずれも十数件の施設を保有しており、内訳は先述した通り9割前後が老人ホーム、1割前後がサ高住となっています。
分配金利回りとNOI利回りを見てみよう
投資するからには最も気になるのが利回り。まずは分配金利回りと、実際に運用によってどれだけの利益が出ているかNOI利回り(不動産の賃貸収入から費用(減価償却費を除く)を差し引いた純収益)を見てみます。
※数値はすべて2016年7月14日調査時のものです。
銘柄 | 分配金利回り | NOI利回り |
---|---|---|
NHR | 4.31% | 未集計 |
HCM | 3.98% | 6.02% |
JSL | 4.53% | 6.0% |
REIT全体平均 | 3.40% | 5.08% |
NHR(日本ヘルスケア投資法人)のNOI利回りは集計できませんでしたがだいたい5.5%~6.0%前後ではないかと予想します。
表の下段にJ-REIT全体の平均の数値を記載しましたが、ご覧の通りヘルスケアREITの分配金利回り及びNOI利回りは全体的に平均値より高くなっています。
利益超過分配金は出ていないか
REITは主に年に2回の分配金が支払われるわけですが、分配金は必ずしも利益から出ているとは限りません。
高利回りの毎月分配金支払いの投資信託を買ってはいけない理由でも説明している通り、投資信託は資産を削って分配金が支払われることも少なくなく、それはREITも例外ではありません。
J-REITの場合、決算資料の利益超過分配金を確認することで分配金の健全性を確認することが出来ます。
下画像(HCMの最新決算資料)のように利益超過分配金が0円になっているということは分配金はすべて当期の利益から支払われていることになり、健全であると言えます。
下画像(NHRの最新決算資料)の分配金状況は当期、前期とも利益を超過して分配金が支払われています。利益外から支払われているということは保有資産の一部が分配金に充てられているということです。
3銘柄の決算資料をすべて確認したところ、NHRは初回決算を除くすべて(合計3期)で利益超過分配金が支払われており、残り2銘柄(HCM、JSL)は現在まで利益超過分配金はありませんでした。
ただ、いずれも期間が短いので今後利益超過分配金が支払われる可能性を否定することは出来ません。
ヘルスケアREITのデメリット、リスクについて
人口減少が加速する昨今、国内の不動産投資の将来性が問われる状況ですがヘルスケアREITは確実に需要が高まる分野であるため、その将来性が期待されています。
現に高齢者施設は2008年から2012年の5年間で2倍以上に増えています。国内のヘルスケアREITはまだ3銘柄しかありませんが今後更に拡大されるのではないかと予想もできますね。
しかし介護施設の入れ替わりは決して珍しくなく、他のREIT(一般住宅や商業施設等)に比べてリスクも高いです。
介護施設が抱えるリスク
REITはあくまで不動産への投資ですが、ヘルスケアREITが介護事業者と賃貸契約をして収益を得ている以上、介護事業者が運営する介護施設の運用状況によって収益が左右されます。
つまり投資対象である介護施設が何かしらの理由によって運用が出来なくなった場合、収益を確保することが出来なくなります。
介護施設は全国的に供給不足で倒産するイメージはあまりありませんが、経営難による倒産は珍しくありません。
相次ぐ老人ホームの倒産〜突然の退去通知、そのとき何が起きるか?
また、介護施設は介護報酬によって運用されているため介護保険の制度の影響を受けやすく、突如経営が厳しくなるというケースも少なくありません。
ヘルスケアREITは比較的高い利回りとなっていますが、その分リスクも高く慎重に選ぶ必要があります。
まとめ:どの銘柄を選ぶべきか
現在上場されている3銘柄の中でどれが優れているか。
結論から言うとどれも似たような資産配分となっているため、どれを選んでも同じようなものかなというのが正直な感想です。
というのも3銘柄ともポートフォリオの構成は似たり寄ったりですし、保有場所(都道府県)もどれも偏りなく全国各地と言った感じ。契約オペレーター(介護事業者)も「SOMPOケアネクスト(株)」や「(株)さわやか倶楽部」が3銘柄とも入っていたりで似たり寄ったり。
物件の取得価格(合計)も一番小さいNHRの18,608(百万円)~HCMの25,021(百万円)と規模もそれほど変わらず、運用期間もNHRが一番早いとはいえどれも上場から2年足らずなので正直どれもほとんど変わりないという印象です。
強いて選ぶなら利益超過分配金を出しているNHR(日本ヘルスケア投資法人)を除く2銘柄のどちらかでしょうか。
どちらにしても上場して1年前後、まだまだ情報は少なくリスクの割にリターンが小さいかなという印象です。
ただ、介護分野は今後も事業規模は大きくなる一方であることは間違いないので投資対象としては悪くない分野だと考えます。
一般住宅型のREIT等と比べるとややリスクが高いですが、それでも需要がある限り大きく外す確率は低いと思われるので選択肢の一つに入れていいと思います。