投資信託の中にはREIT(不動産投資信託)へ投資するタイプのファンドもあります。
※REITの基本的な仕組み、性質についてはJ-REIT(不動産投資信託)の基本と選び方をご参照ください。
REITは不動産投資信託なのでREITに投資する投資信託は必然的に投資信託に投資するファンドオブファンズ方式やファミリーファンド方式で運用されています。
投資対象は国内のREIT(J-REIT)だけでなく海外のREITへ投資するタイプのものもあります。
価格ドットコムの投資信託人気ランキングでも上位に入るほど人気のあるREIT型の投資信託。
※2016年5月は上位ベスト3がREIT型で占められていました。
果たしてREIT型の投資信託は買いなのか?を本ページで分析しようと思います。
REIT型の投資信託を購入するメリットはほぼない
結論から言うと上記価格コムで人気のある3本のファンドを含め、J-REIT、海外REITに投資する投資信託を購入するメリットはほとんどないと考えます。
その理由は基本的にファンドオブファンズやファミリーファンドと同じデメリットが付きまとうからです。
手数料を無駄に支払っていることになる
J-REIT、海外REITどちらにしても双方不動産投資信託なのでこれらを投資対象にファンドを組むと手数料を二重に払っていることになります。
下の画像は「新光 US-REIT オープン」の運用図です。
この投資信託は複数のUS-REIT(アメリカのREIT)に投資する方式となっています。
REITは投資信託なので運用に掛かる手数料が発生します。その手数料の掛かるREITを対象にしているので二重に手数料を支払っていることになります。
が、これはまだマシです。
下の画像は「フィデリティ・USリート・ファンド」や「ラサール・グローバルREITファンド」が採用しているファミリーファンド方式の仕組みの図です。
ファミリーファンド方式では私達一般投資家はまずベビーファンドに投資します。このベビーファンドにあたるのが「フィデリティ・USリート・ファンド」や「ラサール・グローバルREITファンド」等一般販売されている投資信託です。
ベビーファンドは一般投資家が投資することが出来ないマザーファンドに投資するわけですが、問題はこのマザーファンドがREITに投資していることです。
下の画像は「ラサール・グローバルREITファンド」の運用体系の図です。
「ベビーファンド」、「マザーファンド」、更に「世界の不動産投資信託」と3つのファンドを経由して最終的な投資対象である不動産へ投資するようになっています。
これだとどう考えても無駄に手数料を取られているとしか思えません。
極端な話、直接「世界の不動産投信」へ投資出来れば「ベビーファンド」と「マザーファンド」の運用に掛かる手数料を飛ばすことが出来ますよね。
現に上記価格コムでベスト3を占めているファンドの信託報酬はいずれも1.5%~1.65%、カテゴリ平均も1.64%と非常に高水準となっています。
米国REITの利回りはそれほど高くない
海外REITの約6割を占め、日本の海外REIT型投資信託の投資先としても選ばれやすいのが米国REIT(US-REIT)ですが、米国REITの利回り水準はそれほど高いわけではありません。
米国REITにはハイリスクなモーゲージREITと呼ばれる高利回りのものもありますが、それ以外のREITに投資する場合高いものでも利回りは7%程度。平均3~5%程度と日本のREITと大差はありません。
そのため直接海外証券会社を使って投資するならまだしも、わざわざ高い手数料を払って米国REITを集めた投資信託を購入するメリットはほとんどないはずです。
J-REIT型投資信託に何のメリットが…
海外REITだけでなく日本のREITに投資するJ-REIT型の投資信託もあります。
こちらもマザーファンド方式で運用されているものが多く、やはり手数料を無駄に支払っているのではないかと疑問が残ります。
特に海外REITには「買いにくいから」という理由で仕方ないかなとも思えますがJ-REITは上場されているので誰でも購入できるわけです。
なのにわざわざ信託報酬を上乗せで支払ってJ-REITの投資信託を購入する必要性は感じませんよね。
J-REITの平均的な利回りはだいたい3%からせいぜい4%程度。これに信託報酬が1%でも引かれると2%~3%ほどの利回りしか期待できません。
誰でも購入できるJ-REITをわざわざ高い手数料を支払って購入するメリットはあるのでしょうか。
あるとすれば「J-REITの投資口価格は10万円以上もものが多く、分散投資するにはやや投資額が掛かるので1万円から複数のJ-REITに分散投資が出来る」といったところでしょうか。
毎月の分配金に振り回されてはいけない
こういったREIT型の投資信託は価格ドットコムのランキングを見ての通り結構人気があります。
しかしこれら人気のあるREIT型投信の特徴はやはり毎月分配型となっているところです。
※2016年5月の価格ドットコム人気ランキングトップ10のうちREIT型は5本、いずれもすべて毎月分配型です。
分配金の利回りだけ見ると過去1年で20%を超える数字となっていることもあります。
が、これはREITそのものの利回り(3~5%程度)を大きく上回っており、明らかにおかしい数字です。
REITの収益の大半は不動産の家賃収入になるわけですが、その家賃収入以上に分配金が支払われているということになるわけです。
何故このようなことが出来るのか?
それは毎月分配金支払いの投資信託を買ってはいけない理由で詳しく解説していますが、元本を切り崩して分配金を支払っているからです。
例えば下の画像はランキング1位のREIT型投信の分配金の内訳ですが、当期分配金のうち大半が当期の収益以外から分配金が支払われています。
これが何を意味するかというと分配金の大半がファンド(投資信託)の資産から支払われていることを意味し、つまり私達一般投資家が投資した分のほとんどが投資に回されず分配金として戻ってきているだけということです。
ちなみにこのファンドのトータルリターン(実質得られた収益)は過去1年で-3.15%、3年で9.89%、5年で12.57%、10年で5.07%となっており、10年前から投資している人は年間利回りわずか0.5%程しかありません。
当たり前ですが、REITに投資する投資信託がREITそのもので得られる利益より多い利益を得られるわけがないんですよね。
購入するとしても手数料が安価なインデックスファンドか
先述した通りJ-REITは安いものでも1口10万円前後のものが多く、少額で投資することが困難です。更に複数のREITへ分散投資したいとなるとそれなりに投資額が必要でしょう。
なのでどうしても少額でREITへ分散投資したいという場合は信託報酬が安価なREITのインデックスファンドを購入しましょう。
インデックス型であれば国内REITで0.3%~0.4%程度の信託報酬で投資することが出来ます。最も安価なものは「たわらノーロード国内リート(信託報酬0.32%)」です。
海外REITの場合もインデックス型であれば信託報酬0.5%~0.8%程度となっています。最も安価なものは「ニッセイグローバルリートインデックスファンド(信託報酬0.5%)」です。
この程度の信託報酬であればREITに安く分散投資をしたい場合購入を検討しても良いんじゃないかと思います。

投資信託を購入すべきかどうかは信託報酬が決め手!信託報酬を払う価値があると感じた場合のみ購入しましょう。
まとめ
REITは国内なら上場しているのですべて証券会社から簡単に購入することが出来ます。
海外REITは海外の証券会社を開設する必要があるのでややハードルが上がりますが特別に海外REITである必要性を感じているわけでなければ高い信託報酬を支払ってあえて選ぶ必要はないかと思います。
ということでまとめるとREIT型の投資信託を購入するメリットはほとんどないんじゃないでしょうか。
一つあるとすれば先述した通りREITの単価は10万円を超えるものが多いので少額から複数の分散投資がしたいなら…といったところでしょうか。
何にしても投資信託はREIT型以外にもたくさんあるのであえて選ぶ必要はないというのが私の結論です。
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