投資信託はローリスクローリターンで安定的に資産を増やすための投資手法として最も効果的です。
投資信託には、
「預金感覚で始められる」
「専門家に任せて運用してもらえるから初心者に向ている」
といった特徴があり、銀行や証券会社の窓口でもこのような勧め方をすることが多いでしょう。
しかし現実は預金感覚で簡単に利益が出せるものではなく、本当にローリスクで利益が見込める投資信託はごくわずかに限られています。
特に銀行等の窓口で勧められるものを適当に購入してしまうと大きく損失が出てしまったりします。
というわけで本ページでは投資信託初心者が長期的かつ安定的に増やせる見込みのある投資信託の選び方を解説します。
絶対注意すべき5つのポイント
まずこの条件に当てはまっていない投資信託は買うべきではないという5つポイントから解説します。
そのポイントとは、
- 純資産が増え続けていること
- 基準価額が上昇傾向にあること
- 信託報酬が安価であること
- ノーロード(購入時手数料が無料)であること
- 分配金再投資型であること
の5つです。少し多いように見えますがこれでも最低限の条件なので安定的に長期投資をしたければ必ずこれらの条件を満たしている必要があります。
純資産総額が減少している投信は論外
投資信託はたくさんの個人投資家、出資者が一つのファンド(基金)に投資してその基金で投資することによって利益をもたらす投資手法です。
純資産総額とはその基金の資産すべてから必要経費等を引いたものでいわばそのファンド(投資信託、基金)のパワーそのものを表します。
ファンドの運用がうまくいけば当然純資産総額は増えます。
逆に運用がうまくいかず、そのことに気が付いて投資家が手放していけば資産はどんどん減少していきます。
※純資産総額が上昇しているファンドの例(ピンクのグラフが純資産総額)
※純資産総額が減少しているファンドの例(水色のグラフが純資産総額)
後者のように純資産総額がどんどん減少しているファンドが将来好転することはほとんどありません。
前者ファンドのように純資産総額が増加傾向にあるファンドを選びましょう。
ただ、純資産総額が増えているから安心というわけでもありません。
他の項目も見て総合的に判断することが重要です。
参考記事:増加が良いとは限らない。投資信託の純資産総額はここに気をつけろ
基準価額が下がり続けているものは論外
基準価額とは株取引でいう株価のようなものでその投資信託を購入する際、売却する際に最も重要な指数となってきます。
投資信託は原則売却する際に購入した時の基準価額より値上がりしていれば利益が出ます。
そのため購入した時よりも基準価額が下がってしまうことは問題です。
そして投資信託の基準価額は株価と違い、市場によって価格が決まるわけではないので下がり止まりして再びV字回復するような動きはあまりしません。
多くの投資信託の基準価額は下がり始めると歯止めが利かず最悪の場合繰り上げ償還(ファンドの終了が早まること)となったりします。
※基準価額が下がり続けているファンド(青のグラフが基準価額)
※基準価額が上昇傾向のファンド(青のグラフが基準価額)
前者のファンドは開始時1万円だった基準価額が現在6千円を割っています。単純計算で100万円だったものが60万円以下になっているわけですがこのファンドは毎月分配型(毎月約150円ずつ)なのでそこまで赤字が出ているわけではありません。
では結果的にどうなのかというと分配金を再投資した場合が赤のグラフで現段階で10,300円程度となっています。
約3%の利益にはなっていますがこの程度の利益だと分配金を得た際に発生する所得税分が赤字となってしまいます。
今後このファンドの基準価額が増える見込みはありませんし分配金も支払い義務があるわけではないので減額、打ち切りの可能性も否めません。
基準価額が減り続けているファンドは将来性がないので避けましょう。
信託報酬が安価であるものが安定する
信託報酬とは投資信託を保持しているだけで延々と掛かり続ける手数料のようなものです。
通常信託報酬は年単位で表記され、各ネット証券会社の投信ページにも必ず記載があります。
表記は年単位となっていますが実際は日割りで計算され毎日支払うようになります。
例えば上記利率の場合「1.9042%÷365日」が1日に掛かる手数料となります。
信託報酬は高ければ良い投資が期待できるというものではなく安いに越したことはないと考える専門家が多いです。
ローリスクローリターンの長期的な運用をするならば目安としては高くても1.0%以内程度のものが良いでしょう。
上記のような1.9%を超えているようなものはあまりオススメできません。
長期運用ならノーロード投信の積立が必須
リスクを減らしつつ長期的に投資したいのなら積立投資が安定的でお勧めです。
定期積立投資はドル・コスト平均法とも呼ばれる手法でリスクを軽減することが出来ます。
参考記事:ドル・コスト平均法、積立型投資信託のメリットを詳しく解説
定期積立投資をする際には購入時に手数料が掛からないノーロード投信であることが必須で、購入時に手数料が掛かる投信は避けるようにしましょう。
また、定期積立でなくても購入時に手数料が掛かるとその分不利になるので購入時手数料が掛からないものを選びましょう。
同じ投資信託でも購入窓口が銀行かネット証券会社かで手数料の有無が変わってくることもあるので購入する前によく調べることが肝心です。
手数料を無駄に支払うことにメリットは一つもありません。
毎月分配型は避け、分配金再投資型を選ぼう
特に人気のある投資信託は毎月分配金が支払われる毎月分配型のものが多いです。
しかしこの毎月分配型の投資信託は長期投資に全くと言っていいほど向いていません。
その理由は大きくわけて二つあり、一つは長期投資は複利の力がないと資産がほとんど増えないこと、もう一つは分配金を得ることによって税金が掛かってしまうことです。
下の表は分配金を再投資して複利を得た場合と分配金を再投資せず単利で投資した場合の違いを表しています。
毎月25,000円ずつで年利5%で計算しています。
年数 | 元金 | 複利なし(単利5%) | 複利あり(5%) |
---|---|---|---|
1年 | 30万円 | 308,120円 | 308,142円 |
2年 | 60万円 | 631,240円 | 631,608円 |
5年 | 150万円 | 1,690,600円 | 1,700,183円 |
10年 | 300万円 | 3,756,200円 | 3,849,664円 |
利益を再投資するかしないかで10年後に10万円以上、利益に12%以上の差が生まれています。
長期投資をする際に得た利益分を再投資して複利で増やすことは常識なのですが投資信託の場合、どうしても目先の分配金に釣られて購入する人が多いため毎月分配型の投資信託の方が売れやすいです。
しかし毎月分配金を支払っているということはその分ファンドの資産流出に繋がっているわけですから基準価額も下がり、最終的に購入した資産を毎月分配金で小分けにして受け取っているだけの投資とも呼べない状態になってしまいます。
現に先述したファンドのグラフは分配金を再投資した場合の基準価額がほぼ横ばいになっていることから毎月分配金を受け取っている分ファンド自体の価値を落としている状態となっています。
※赤のグラフが分配金を再投資した場合の基準価額。開始時と現在でほとんど変わっていないので実質の利益もほとんど出ていないことになる。
毎月分配型の投資信託は資金が流出してしまい、最悪の場合まともな運用が出来なくなる場合もあります。
安定的かつ長期的に投資するなら分配金再投資型の投資信託を選びましょう。
※下画像は分配金再投資型投信の分配金の一例。現在国内の投信は法律上分配金なしに出来ないので再投資しているという名目となっています。
分配金を受け取ると基本的に所得税が発生しますが元本を崩して支払われる分配金(元本払戻金)には課税されません。
しかし利益が出ている月は課税されるためどちらにしても毎月分配金を受け取ることは余分な税金を払ってしまうことになります。
(例)左の税金は毎月分配金を受け取った場合のもの、右の税金は分配金を再投資した場合のものです
月数 | 分配金 ()内は運用利回り | 税金 | 分配金再投資 ()内は運用利回り | 税金 |
---|---|---|---|---|
1月 | 100円(10%) | 20% | 0円(10%) | 0 |
2月 | 100円(-10%) (元本払戻金) | 0 | 0円(-10%) | 0 |
3月 | 100円(10%) | 20% | 0円(10%) | 0 |
4月 | 100円(-10%) (元本払戻金) | 0 | 0円(-10%) | 0 |
合計 | 課税対象200円 (運用利回りは0%) | 40円 | 利回りが0なので 売却しても課税されない | 0 |
どちらも結果的に利回り0で儲けがなくても分配金を毎月貰っていると利益が出た時に税金を支払うことになるので無駄に税金を支払う必要が出てきます。分配金をもらった分基準価額が減っており、結果的に損失となっても支払った分の税金が帰ってくることはありません。
安定志向であれば分散投資の投信を選ぼう
これまで上げてきた5つのポイントは必須条件とも言えるものです。
ここからは極力リスクを避けたいけどある程度(年利5%前後)のリターンを得たいという場合に私が目安としているポイントを書きます。
安定成長へ分散投資が最も効率的
上記5つのポイントはどちらかというと投資信託の販売方法うあ運用状況にかかわるものが中心でしたがここからは具体的に「何に投資しているか」についてです。
あくまで主観的な意見でしかないので鵜呑みにする必要はありませんが実際に多くの書籍にも書かれていることなので参考にしてみてください。
では実際「何に投資している投資信託を買うか」ですが、リスクを極力回避し、かつリターンを望むなら安定成長の金融資産へ投資しているものが効率的であると考えます。
具体的に言うならば「米国株や」「欧州株」、「オセアニア諸国」、いわゆる先進国への投資です。
近年の日本は停滞気味ですが米国を含む先進国はまだまだ成長を続けています。
アメリカを中心に先進国へ投資する「SMT グローバル株式インデックス 」や「eMAXIS 先進国株式インデックス」はここ1年業績が悪いものの、過去5年間のトータルリターンは13%以上と高水準です。
双方米国株が中心なのでアメリカの景気に左右されますが、現状でアメリカが大きく崩れることは考えにくいですから安定的であると言えます。
※画像はSMT グローバル株式インデックス のリターン
もちろん過去の実績が将来を保障するわけではありませんが米国及びその他先進国が衰退しない限り利益は見込めると思います。
まとめ
投資信託を買う多くの人が、「大きなリターンは望まないから預金感覚で長期的に低リスクで投資したい」と考えているにも関わらずそうでないリスクの高い投資信託を購入しているのが現状です。
日本では学校で投資、資産運用に関する教育を一切受けないのでよくわからず買ってしまうわけです。
そのため本当に利益が出る投信は少なく良いものを自分で見極める必要があります。
投資初心者にとって投資信託はよくわからない言葉が多く大変かもしれませんが何も調べず買ってしまうと大きく損失が出てしまう可能性が高いのでまずは上記ポイントを抑えたものを購入してみるようにしましょう。