ETFという投資商品をご存知でしょうか?

ETFとは上場投資信託「Exchange Traded Funds」の略です。

簡単に言うと投資信託が市場に上場していて個別株の様に自由に売買できる形になっているのがETFです。

実はこのETFは日本でも200以上、世界中では1000以上運用、上場されています。

これ程多くのETFが運用されているのは、ETFが優れた資産運用手段だからです。

最近(2016年)では日銀がETFを数兆円単位で買い入れ増額を行い話題となりました。

ETFは日本語で上場投資信託という呼び名が付いていますが、市場に上場しているため普通の投資信託とは、全く異なる性質を持っています。

ETFを上手く使いこなせば資産運用の強い味方になりますが、特徴を理解せずに利用すれば思わぬ損失を被る事もあります。

本ページではETFの事を詳細に解説していきます。




ETFの概要

ETFは非上場投資信託と同じ様に指数(インデックス)をベンチマークとして運用されています。

指数(インデックス)とは株式や債券の世界では、様々な指数と呼ばれる基準が設定されています。ベンチマークとは目安という意味で、現在日本の市場で上場しているETFはこの指数に連動する投資信託となっています。

この基準には一定の目的が設定され、目的を満たす為に必要となる銘柄を複数組み合わせて1つのグループとして作成されています。

そして、グループの平均値を指数として表示します。

代表的な例を上げると、日本株の平均指数の一つに東証株価指数(TOPIX)という指数があります。

指数:TOPIX
目的:東証1部に上場する全銘柄の動きの平均値を表す
投資対象:東証1部に上場する全銘柄

これに連動するETFをTOPIX連動型ETFと言い、現在「ダイワ上場投信-トピックス」を始めとする6種類が上場しています。

参考サイト:ETF銘柄一覧|JPX日本取引グループ

また、指数には沢山の種類があり、国内に限らず、アメリカの優良企業500社の平均値を指数として表示する「S&P500」や世界中の先進国の国債価格の平均値を指数として表示する「シティ世界国債インデックス」などがあります。

指数を上手く利用する事で、その指数が表す市場の変化を読み解く事が出来る様になります。

ETFが指数に連動する手段

ETFが指値に連動する手段として、直接現物に投資する現物拠出型と、指標に連動する債権に投資するリンク債型があります。

現物拠出型は実際にETFが現物に投資を行うので指標に高いレベルで連動し、投資資産も信託銀行に個別管理されるので、万が一ETFの運用会社が倒産しても投資家の資産は守られます。

一方リンク債型は金融機関が発行する指標と連動する債権に投資しています。その為、債権を発行する金融機関が倒産すればETFの運用会社に問題が無くても投資家は大きな損失を被る事があります。

余程の理由が無い限りは、現物拠出型のETFから投資を行うのが良いでしょう。

ETFに投資する事は指数に投資する事と同意

現物拠出型、リンク債型の2つの手段がありますが、どちらの手段でもETFは目的の指数に連動した値動きを行います。

つまり、ETFに投資する事は、目的の指数に投資する事と同じ事になります。

銀行等で直接購入出来る通常の投資信託(非上場投資信託)には指数の上を目指すアクティブ型というのものがありますが、国内市場のETFには現状ではインデックス連動型しかありません。

ETFの特徴

ETFは上場投資信託のため、株取引に近い特徴を持っています。

そのため、下記のような特徴を持っています。

指値で購入できる

ETFは上場しているため、株と同様指値で注文することが出来ます。

指値注文とは、買う値段を指定して注文する方法です。

非上場投資信託は売買手続きをしてから、実際に売買されるまでにタイムラグがあるので、売買手続きの時点では価格は分かりません。

売買が成立した後で始めて価格が判明します。

その為、非上場投資信託は市場の流れを読んでピンポイントに割安、割高なタイミングで売買するのはとても難しいです。

これは一見素晴らしい特徴だと感じると思いますが、実はこれはメリットでもありデメリットでもあります。

それは、市場の流れを読んで予想通りにETFの価格が動けば良いのですが、市場が思いも寄らない動きを行えば、当初の割安だと思ったETFの価格が実は割高に、割高だと思ったETFの価格が割安になってしまう事があるからです。

デメリットもありますが、自分の希望する指値で売買が出来るのメリットは魅力的です。

空売りができる

ETFは市場に上場しているので個別株の様に売買する事ができます。

そして、個別株の様にETFを保有している他の誰かからETFを借りてきて空売りする事ができます。

空売りとは?

空売りとは株式やETFを証券会社から借りてきて市場で売り、後から株式やETFを市場で買い戻して証券会社に返す取引方法の事です。

借りた時よりも株式やETFが値下がった時に利益を得る事ができます。

空売りができる事で取引の選択肢が広がり、より幅広い局面で投資を行う事ができます。

これは非上場投資信託では真似できない、ETFのメリットです。

今後指標が値下がると予想した際には、ETFを空売りする事で指標の値下げ対するポジションを簡単に確保する事ができます。

信託報酬が安い

ETFは非上場投資信託と同じ様に、売買に関わる手数料の他に保有している間に掛かる信託報酬があります。

信託報酬は利益を削るので出来る限り低い方が良いです。

非上場投資信託の平均信託報酬は約1.5%と言われていますが、ETFの平均信託報酬は約0.6%、しかも、インデックスに投資するETFでは0.3%〜0.06%と非常に低コストで保有する事ができます。

何故ETFは信託報酬が低コストなのかというと、ETFが市場に上場して売買されているので販売会社に支払う販売報酬の分が必要無いからです。

長い期間投資を行う程、信託報酬の高低が大きな要素になります。

長い期間投資を行う事を前提とするのなら、非上場投資信託よりも低コストで保有できるETFの方が信託報酬の差額分だけリターンが高まり、良い投資結果を残す事ができます。

ETFにも分配金がある

非上場投資信託は分配金が出る場合もあれば、出ない場合もあります。

そしてら分配金の出る出ないは決算が終わった後にしか分からず、事前に正確に知る事ができない非常に不明確な物です。

ETFは配当等の収益から運用に関わる費用を除いた分を全て分配する事が法律で定められいる利益が出ている限りは必ず分配金が出ます。

分配金が支払われるタイミングは毎月支払われるものもあれば年1回支払われるものもあります。

全体の傾向としては国内ETFは年1回の7月、または年2回の7月と1月に支払われる場合が多く、外国産ETFは年4回3ヶ月毎に支払われる場合が多いです。

ETF毎に記載されているので、購入前に確認すると良いでしょう。

分配金が出るか出ないか分からない非上場投資信託よりも、毎年決まった時期に分配金が支払われる事が分かっている、ETFの方が分配金を利用した投資計画を立てやすいです。

ETFの問題点(デメリット)

前項で紹介してきたように、素晴らしい特徴を持つETFですが、問題がない訳ではありません。

ここでは、ETFが持つ問題点について解説していきます。

流動性が低い

日本国内のETFの多くは流動性の問題を抱えています。

流動性が悪いと何故問題なの?
何故取引が成立しないの?

流動性とはそのETFが市場で頻繁に取引が行われETFの所有者が入れ替わる事を表しています。つまり取引がどれだけ行われたかということです。

流動性が高ければ、市場でETFの売買取引が頻繁に行われているのでETFを購入するのも売却するのも簡単にできます。

この流動性はとても重要です。

何故ならETFは株式市場に上場しているので、購入するにしても売却するにしても必ず相手が必要です。

ETFを入手する為に誰かから購入する。

ETFをお金に変える為に誰かに売却する。

どちらも相手がいなければできません。

流動性が悪く頻繁に売買取引が行われないETFでは購入する相手も売却する相手もなかなか現れません。流動性の悪いETFでは取引したくても相手がいないので自分の意思でETFの売買ができないのです。

そんな流動性の悪いETFを売買するには、市場の様子を見て売買希望者を探す必要が出てきます。

もうこうなると、自分の思った価格で売買できるETFのメリットが全く活かせなくなるだけでなく、最悪の場合にはETFを処分する事さえ出来なくなります。

こうならない為に、できるだけ流動性の高いETFを選んで購入する事が大切なのです。

流動性を表す出来高とは?

流動性は、1日に何回取引が行われたかを示す出来高で表示されます。

出来高が多ければ、そのETFは市場で沢山取引がされているので、売りたい価格で売り、買いたい価格で買いやすいです。

しかし日本国内のETFは知名度が低い為なのか、知名度の高い数種類のETFを除けば出来高は1日100前後の物が大半です。

この程度の出来高では、いざETFを売買しようと思っても取引が成立せず思った様な価格で売買する事ができません。

長期間保有するつもりなら流動性を犠牲にする選択もアリですが、多少なりとも売買する予定があるのなら、ETFの出来高が1日1000程度は継続して取引されている流動性があるETFを選んで投資するのが良いでしょう。

ただ、年々ETFの出来高は上昇傾向にあるので、この流れが今後も続いていけば、いずれETFの流動性の問題は自然と解決されていくと考えられています。

また、非上場投資信託は運用会社が運用資産を売却する事で、いつでも換金する事ができるので流動性の問題とは無縁です。

市場によって価格が決まるため価格乖離が起こる

ETFは指標に連動するように投資を行っているので、投資している資産の価格を調べる事でETFの総資産価格が分かります。

この総資産価格は基準価格として1日に1度ETFの運用会社から公開されています。

しかし、市場の流れに応じてETFの資産価格は常時変化しているので、急激な市場の流れが起きた時には1日に1度公開される基準価格では役には立たない事があります。

そこで、役立つのがJPX(日本取引所)から公開されている「インディカティブNAV」です。

インディカティブNAVは、JPXに上場している全てのETFを対象に、常時上下するETFの資産価値を秒単位で算出計算して表示してくれます。

つまりインディカティブNAVを参照すれば、ETFの総資産価格を簡単に正確に把握する事ができるのです。

理論的にETFの総資産価格が分かれば、誰もが総資産価格よりも安く買いたいと思うはずです。

しかしここで問題になるのは総資産価格に近い価格でETFを購入する事が現状難しいという事です。

それは日本のETFは流動性が乏しい為に、取引の具合によって総資産価格から取引価格が上にも下にも乖離します。

これは流動性が高く1日の出来高が多い一部のETFを除いた全てのETFに当てはまります。

この問題はETF側も認識しているので、多少はETFの運用会社の中の人がETFを総資産価格に近づける為に取引を行ってくれるのですが、それも資金や時間の制約があるので完璧ではありません。

この問題を回避する為には、ETFの売買を行う際には自分でインディカティブNAVを確認してETFの総資産価格を把握して、価格が乖離している時は取引を避けるという方法が有効です。

非上場投資信託は常に取引が総資産価格で行われるので、市場の取引による価格乖離が起こる事はありません。

ETFの本場 アメリカのETF

日本のETFの問題は流動性の低さが原因の根底にあります。

この問題は個人でどうこうできる物ではありません。

恐らく日本でETFに投資している多くの人が「どこかに流動性の高いETFは無いものか?」と考えている事でしょう。

実は流動性も規模も圧倒的に優れているETFはあります。

それは、アメリカのETFです。

アメリカはETFの取引が活発で、日本とは桁違いに流動性が高いので、アメリカのETFに投資を行えば、流動性に纏わる問題は全て解決します。

最近ではアメリカのETFへの投資をバックアップしてくれる証券会社も多く出てきたので、昔よりも手軽にアメリカのETFに投資できる環境が整ってきました。

流動性の高いETFに投資したい!

という方は、アメリカのETFへの投資をお勧めします。

まとめ

ETFは優れた投資手段です。
しかし、全ての面で万能ではありません。

メリットもあればデメリットもあります。

その辺りをしっかりと理解して、非上場投資信託、ETF、個別株などの投資方法を組み合わせて資産運用を進めてみて下さい。