投資信託に関わらず投資によって利益を得た場合、原則約20%の所得税及び住民税を支払う義務が生じます。

投資信託による利益とは原則分配金と解約(売却)による売却益との2つとなるわけですが、その際に確定申告が必要な場合とそうでない場合があります。

本ページでは投資信託で利益が出た場合に確定申告が必要かどうか等を解説します。




確定申告が必要かどうかは口座の種類によって変わる

特定口座1

株や投資信託で利益が出た場合に、確定申告が必要か?不必要か?は証券会社に開設している口座の種類によって変わります。

個人が証券会社に開設できる口座には以下の3つがあります。

  • 特定口座(源泉徴収票あり・なし)
  • 一般口座
  • NISA口座


この3種類の中の、どの口座を保有しているか?によって確定申告の必要性が異なります。

それでは、それぞれの口座の確定申告時の対応を解説していきます。

特定口座(源泉徴収あり)なら申告は不要

特定口座(源泉徴収あり)は証券会社が口座内の株や投資信託などの損益を計算して確定申告を行ってくれるので、個人が確定申告をする必要がありません。

特定口座(源泉徴収あり)を開設しても、特に手数料は掛からず申告漏れを心配する必要もないので、特に毎年確定申告をする必要のない会社員の方は特定口座(源泉徴収あり)にしておいた方が良いでしょう。

それ以外の口座は申告が必要

特定口座(源泉徴収なし)と一般口座は確定申告が必要です。

特定口座(源泉徴収なし)は、1年間の口座内の株や投資信託などの損益の計算を証券会社が行ってくれます。

確定申告の時期になると、年間取引報告書として損益の結果を報告してくれるのでその報告書を使って簡単に確定申告を行うことができます。

一般口座は口座内の株や投資信託などの損益の計算を全て自分で行い、その結果を基に確定申告を行います。

特定口座は通常一般口座に比べて手数料が掛かるというわけではないので損益計算を自分でやらなければならない一般口座を利用するメリットは特にありません。

NISA(少額非課税制度)はもちろん不要

NISA口座は、口座内での株や投資信託などの利益は全て非課税になるので確定申告の必要はありません。

また、NISA口座は口座内で損失が出た場合でも確定申告することはできません。

つまり、NISA口座では、NISA口座以外の口座で得た利益を、NISA口座内の損失で補う損益通算をすることができないのです。

また、NISAは原則一人1口座しか開設することが出来ません。

NISA口座についての詳細は、NISAのメリットとデメリット、有効活用法を解説をご一読ください。

複数口座がある場合の確定申告

複数の口座を証券会社や銀行などに保有している場合には、年間損益を合わせて申告する必要があります。

そして、複数の口座の年間損益を合算することを損益通算と言います。

損益通算を行い確定申告をすることで、支払った税金の一部を取り戻したり、損失を翌年以降に繰り越す、といった税制の優遇措置を受けることができます。

一般口座と特定口座の損益通算の具体例

・A証券会社に一般口座
・B証券会社に特定口座(源泉徴収あり)

の2口座を保有している場合、A証券会社の一般口座は50万円の損失が出ており、B証券会社の特定口座(源泉徴収あり)では50万円の利益が出ているとします。

B証券会社の特定口座(源泉徴収あり)では50万円の利益を確定した時点で、50万円の20%、10万円が税金として徴収されることになります。

このA証券会社の一般口座とB証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を損益通算すると、確定申告書類上ではB証券会社の特定口座(源泉徴収あり)の利益50万円から、A証券会社の一般口座の50万円の損失が引かれます。

※B特定口座利益50万円-A一般口座損失50万円=年間の損益0円

その結果、損失と利益が同額なので年間損益は0円になります。

年間損益が0円ということは、本来であれば税金を支払う必要はありません。

しかし、B証券会社の特定口座(源泉徴収あり)では、年度の途中の利益が確定した段階で約10万円の税金が支払われています。

この過去に支払った税金を確定申告で年間損益が0だったと、申告することで過去に支払った約10万円の税金を全額取り戻すことができます。

パターン2.損失よりも利益の方が多い場合

もう一例上げると、

・A証券会社に一般口座
・B証券会社に特定口座(源泉徴収あり)

の2口座を保有していて、A証券会社の一般口座は30万円の損失が出ており、B証券会社の特定口座(源泉徴収あり)では50万円の利益が出ているとします。

B証券会社の特定口座(源泉徴収あり)では、50万円の利益を確定した時点で、50万円の20%、10万円が税金として徴収されます。

このA証券会社の一般口座とB証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を損益通算すると、確定申告書類上ではB証券会社の特定口座(源泉徴収あり)の利益50万円から、A証券会社の一般口座の30万円の損失が引かれます。

※B一般口座利益50万円-A一般口座損失30万円年間の利益20万円

その結果年間の利益が損失を上回り、年間損益は20万円になります。

年間損益が20万円ということは、本来支払う必要のある税金は20万円の20%、4万円です。

※年間損益20万円-税率約20%=約4万円

しかし、B証券会社の特定口座(源泉徴収あり)では、年度の途中の利益が確定した段階で約10万円の税金が支払われています。

年度途中で支払った税金約10万円-本来の税金約4万円=余分に払っている税金約6万円

つまり、税金を約6万円余分に支払っていることになります。

この場合も確定申告をして年間損益が20万円だったと、務署に申告することで過去に支払った約6万円の税金を取り戻すことができます。

パターン3.利益よりも損失の方が多い場合

最後に損失が出た場合を解説します。

・A証券会社に一般口座
・B証券会社に特定口座(源泉徴収あり)

の2口座を保有していて、A証券会社の一般口座は100万円の損失が出ており、B証券会社の特定口座(源泉徴収あり)では50万円の利益が出ているとします。

B証券会社の特定口座(源泉徴収あり)では50万円の利益を確定した時点で、50万円の20%、10万円が税金として徴収されます。

このA証券会社の一般口座とB証券会社の特定口座(源泉徴収あり)を損益通算すると、確定申告書類上ではB証券会社の特定口座(源泉徴収あり)の利益50万円から、A証券会社の一般口座の100万円の損失が引かれます。

※B一般口座利益50万円-A一般口座損失100万円=年間の損失50万円

その結果、年間の損失が利益を上回り、年間損益は50万円になります。

年間損益が-50万円ということは、本来支払う必要のある税金はありません。

しかし、B証券会社の特定口座(源泉徴収あり)では、年度の途中の利益が確定した段階で約10万円の税金が支払われています。

そこで、確定申告をして年間損益が-50万円だったと税務署に申告することで過去に支払った約10万円の税金を取り戻すことができます。

しかも、申告した損失はその後3年間繰り越すことができるので、来年、再来年の利益と損失を損益通算することで支払う税金を減らすことができます。

まとめ

保有する口座の種類や、年間の損益によって確定申告の必要性は変わります。

特定口座(源泉徴収あり)の口座一つだけで運用すれば原則自分で確定申告を行う必要はなくなります。NISA口座と合わせば2つの口座で確定申告が不要なので特に投資し始めくらいであれば確定申告をしなければならない事態にはならないでしょう。

しかし複数の投資信託を保有し、他にも株式投資やFX等をやるようになると損益通算が欠かせません。その場合確定申告が必要になってきます。

申告は難しい箇所もありますが、特定口座であれば損益通算は各金融機関が報告書を発行してくれるので割と簡単に出来ると思います。

合計金額が赤字でも特定口座(源泉徴収あり)で支払った税金は申告しないと返ってくることはありませんので必ず申告できるようにしておきましょう。