ネットの各証券会社や金融情報サイト、価格.com等の比較サイト等多くのサイトで投資信託の売れ筋ランキングが記載されています。
これらランキングで上位にある投資信託は非常に人気があり、利回りも良い物が多くつい惹かれて買ってしまいそうになりますが、安定的にかつ長期的に資産を増やしたいと考えるならランキングを見て投資信託を選んではいけません。
何故なら、
- ランキングだけ見ても内容が分からない
- 人気が集まるのはハイリスク商品が多い
- ランキングは良い物ではなく売れているものが上位に来る
- そもそも買っている人の大半がよく分かっていない
からです。
そもそもランキングを参考に投資信託を購入するのは売れ筋の株を買うのと同じようなもので、普通に考えてやるべきことではないですよね。
ランキングだけじゃよく分からない
当たり前ですがランキングの情報だけではその投資信託がどんな投信なのか分かりません。
下画像は価格ドットコムのランキング1位の投信の情報ですが、基準価額や純資産、シャープレシオ(リスクの度合い)、信託報酬(運用に掛かる手数料)、分配金等重要な事項についてはだいたい書かれています。
ここに書かれている情報を見ればその投資信託がこれまでどのような運用を行ってきたのか、利益が出ているか出ていないか、リスクが高いか低いか等だいたいのことはわかります。
しかし肝心の中身が全く分かりません。
何故利益が出ているのか、基準価額が下がっているのか、上がっているのか、それどころか投資信託の特徴が書かれているのはわずか数行(下画像参照)しかないため、どのような投資信託なのか、具体的に何に投資をしているのかさえもこれだけでは全く見えてきません。
これだけの情報量で購入を決めてしまうのはあまりにもリスクが高いです。不動産で例えるなら外観だけを見て購入を決めるようなものです。
価格ドットコムに至ってはトータルリターン(実質の収益率)さえも表記されていないので本当に利益が出ているファンドなのかさえもわかりません。
ハイリスクハイリターンに人気が集まる
投資信託のランキングページでは儲かるかどうかわかりやすい収益率や分配金で比較されやすいため、どうしてもそれらが高い投信が売れやすいです。
例えば分配金が毎月100円ずつ出ている投信と、0円が並ぶ投信二つを比較した時、圧倒的に前者の方が売れてしまうわけです。
価格ドットコムの人気ランキングにおいても上位10位のうち実に9本の投資信託が毎月分配型の投資信託でした(2016年5月17日時点)。
毎月分配型の投資信託は、高利回りの毎月分配金支払いの投資信託を買ってはいけない理由でも書いた通り、投資家の目を引くために元本(資産)を切り崩して分配金を出しているものも多くリスクが高いものがほとんどです。
実際、それら9本の投資信託のほとんどが信託報酬1.5%を超えるアクティブ型の投資信託でハイリスクハイリターンの投資手法となっています。
もちろんこれらの投資信託を絶対買ってはいけないとは言いませんが、低リスクで堅実に資産を増やしたいと考える投資初心者に向いているとは言えないでしょう。
売れているものが売れる単純構造
ランキングとはそもそも売れているものが上位に来る構造となっています。
つまり決して良い商品が上位にあるわけではありません。
例えば日本で一番売れているスマートフォンはダントツでiPhoneですが、だからと言ってiPhoneがダントツに良いかというとそうとは言えない部分があります。
事実、スマートフォンに詳しい人がiPhoneを持っていないということは少なくありません。その業界に詳しい人が売れている商品を必ず評価するとは限りません。
投資信託も同様にランキング上位にあるものは人気のある商品であり、投資信託に詳しく資産を堅実に増やしている人が買っている商品ばかりとは限らないわけです。
ちなみに私も上記価格ドットコムの上位3位の商品を買っていませんし買おうとも思いません。
ランキングは基本的に広告によって宣伝され、知名度が上がったものが上位表示されるようになっています。
投資信託に限った話ではありませんがランキング上位だからと言って良い商品であるとは限らないので注意しましょう。
そもそも買っている人の大半がよく分かっていない
ランキングを見て買ってはいけない最大の理由がこれです。
日本は欧米の先進国に比べ投資に疎い人が多く、よくわからないまま投資信託を買っている人が多いです。
欧米では投資について学校で学ぶ機会がありますが日本では「株式会社の仕組み」のようなことしか学びません。
そのため銀行等で、
「低リスクで資産が増やせます」
とか、
「専門家が運用するので安心して資産が増やせます」
「毎月分配金が支払われます」
のような営業トークを簡単に鵜呑みにして購入する人がほとんどです。
実際、売れやすい投資信託はランキングを見ての通り高配当の分配金を毎月支払っている投資信託が中心で、リスクが低く着実に資産を増やしている投資信託ではありません。
しかし投資信託を買う人のニーズ、要望は低リスク低リターンで、着実に増やしたいと考えていることがほとんどです。
ハイリスクハイリターンを望む人は株取引やFX等をやるでしょう。
にも関わらずハイリスクハイリターンの投資信託ばかり売れているのは買っている人達の多くが投資信託の中でもハイリスクハイリターンの商品を買っていることに気が付いていないからです。
本当に良い投資信託
では本当に買うべき投資信託はどのような商品なのか?
「これが一番良い!」
「この投信を購入すべきだ!」
というのはありませんが、検討する際は以下の4つを守るべきであると考えます。
- インデックス型で選ぶ
- 信託報酬(手数料)が安いものを選ぶ
- 分配金なし(再投資型)を選ぶ
- テーマ型(最新AI、ロハスなど)は除外する
この4つを守って選べば損失の出やすいダメな商品を避けることが出来ます。
具体的には以下の商品などがおすすめです。
野村 外国株式インデックスファンド
野村アセットマネジメントが運用するインデックスファンド。
ベンチマークとしているインデックスは多くの先進国インデックスで採用されているMSCIコクサイです。
※MSCIコクサイの詳細は初心者はインデックスファンドを購入するべきだと言われるのは何故かの「海外市場は成長している」項目をご一読ください。
野村 外国株式インデックスファンドは同ジャンルの中では運用期間が10年以上と比較的長く信頼出来る投資信託です。
リーマンショックの影響もあり、過去10年間リターン(年率)は6.99%とやや高く、5年の年率は12.55%、3年の年率は4.80%となっています。
10年前に100万円購入して保有している人は約169万、5年前に購入して保有している人は約160万円になっている計算です。
比較的安定的と言われる先進国でもやはり株価は荒れることも多いため、投資タイミングによって大きく変わってくる可能性もあります。
※下画像は「野村 外国株式インデックスファンド」がベンチマークとしているMSCIコクサイ(青線)の値動きのグラフ
「野村 外国株式インデックスファンド」の信託報酬は0.64%。最安値ではありませんがかなり安価な分類に入り、何より長期的に運用されているので最もおすすめ出来るファンドでると考えます。
SMT グローバル株式インデックス
三井住友トラスト・アセットマネジメントが運用するインデックスファンドです。
ベンチマークとしているインデックスはMSCIコクサイ(配当込み、円ベース)です。日本を除く先進国を対象としたインデックスはMSCIコクサイをベンチマークとしているものがほとんどです。
運用期間は約10年で過去5年間のリターン(年率)は12.27%、3年間は4.58%となっています。
「SMT グローバル株式インデックス」の信託報酬は0.54%と同カテゴリ内では最も安い分類に入ります。
同ジャンルで同じインデックスファンドを比較すると信託報酬の差がリターンの差となってくるのでやはり信託報酬が安いものに越したことはないでしょう。
外国株式インデックスe
三井住友トラスト・アセットマネジメントが運用するインデックスファンド。
ベンチマークとしているインデックスはMSCIコクサイ(円ベース)です。
上記「SMT グローバル株式インデックス」とかなり似たファンドとなっています。信託報酬も0.54%で同じ最低水準です。
リターンもほぼ似通っていますが5年間のリターン(年率)は12.29% 、3年間は4.57%とこちらの方が微妙に優秀です。誤差レベルですが。
これらの投資信託はネット証券会社で購入すれば手数料もほとんど掛かりません。
まとめ
投資信託を購入している人の大半は具体的に何に投資をしているのか、どれくらいのリスクがあるのか、毎月分配金をもらえることがどういうことなのか、基準価額が下がるということはどういうことか・・・
それらを何もわからず購入している人がほとんどです。でなければこのようなランキング結果にはならないはずです。
先述した通り日本では金融商品、資産運用に対する知識を持っている人が少ないため、売れ筋商品を買うと金融会社にカモにされてしまうケースがほとんどです。
例えば(金融会社の)債券投資によって払い戻しを行っている個人年金なんかも、自分で債券に投資した方がずっとリターンは大きいはずなんですが、同じリスクでとても利回りの悪い方(個人年金)を選ぶ人がたくさんいるわけです。
投資信託を買っている人、選んでいる人のほとんどがよくわからず購入しているわけですから売れている商品を買うのは非常に危険です。
ランキングを見て投資信託を選ぶのはやめましょう。